閑話4 〜彼女達の日常
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あたしが部屋を飛び出して、目的の場所へ辿り着こうとした時。廊下の先にその人物は立っていた。廊下の突き当たりにある窓へ寄りかかるようにしてこちらを見つめている。
「その表情から察するに思い出したみたいね。……ティアナ・ランスター?」
その人物は。その少女は、あたしを珍しい生き物を見るように佇んでいる。
「あなたは……なに? そんなことはどうでもいいわ。あたし達のアスナをどこへやったの?」
どうしてこんな馬鹿げた事態に気が付かなかったのか。本当に──── 馬鹿げている。昼休みに中庭で会ったアスナはあたしを見上げていた。キャロに手を引かれて戻ってきたアスナ。持ってきた資料を両手で抱えるようにしてなのはさんへ渡したアスナ。テーブルのソースを身を乗り出しながら取ろうとしていたアスナ。アスナは──── 小さくなっていた。見た感じはキャロやエリオよりも年下だったような気がする。
「思い出すはずはないんだけどね。あなたの頭脳は『思考』することに特化しているのかしら」
そんなことはどうでもいい。あたしは一瞬でバリアジャケットを身に纏うと同時に、ホルスターからクロスミラージュを引き抜く。それを見ても少女は眉一つ動かさない。
「……過去のアスナと、あなた達が知っているアスナ。つまり未来のアスナと入れ替わっちゃったのよね。あぁ、理由は話さないわよ? もう解決しちゃってるし、意味は無いから。……まったくあの男は、おろおろするばかりで役に立たないし。で、私が出張ってきたというわけ。私は友達で家族らしいしね」
少女が言っていることを何一つ理解出来なかった。あの男? アスナの家族? あたしの混乱をよそに少女は尚も話し続ける。
「眠りなさい、ティアナ・ランスター。明日になれば全て元通りよ。あなた達の日常が帰ってくるわ。……私はあなた達の『物語』には関わらないし、関わるべきじゃない。私は彼に会った時にそう決めた。あたしのような存在や、出鱈目な力を使って我が物顔で暴れてる人間なんて気分が悪いでしょ?」
いったい、何を言ってるんだろう。
「じゃ、帰るわよ。アスナ」
いつの間に来ていたのか、少女の傍には小さなアスナがいた。今のアスナをそのまま小さくしたような容姿。髪型だけが今と違い、あたしのように左右で結わえている。少女はアスナを抱きかかえると、あたしに目の前から姿を消した。本当にフィルムのコマ落としのように消えてしまった
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