閑話4 〜彼女達の日常
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「二人なら資料室。なのはさんのお使いだよ」
なるほど、キャロのお手伝いか。あたしは自分の分を仕上げてしまったし、スバルの手伝いでもしようかと思った時に、キャロがアスナの手を引いて戻ってきた。仲の良いことだ。アスナは持ってきた資料を両手に抱えるようにしてなのはさんへと渡す。アスナが満足そうな顔をしながら戻ってきたのを横目で見ながら、スバルの報告書を手伝ってやるのだった。
食堂にて夕食。寮に帰って自炊する人間もいるが、あたし達は専ら食堂でお腹を満たしていた。スバルは相変わらず何処に入るんだと思うほどの量だし、アスナはいつも通りの小食だ。オムライスを食べていたアスナが、身を乗り出しながら手を伸ばす。あぁ、ソースを取ろうとしているのか。あたしが取ってやろうと思ったところにアスナの隣で食事をしていたフェイトさんが、ひょいとばかりに手を伸ばして取ったソースをアスナに渡す。
「……ありがとうございます」
「ううん。……アスナ? ピーマンとか残したらだめだよ」
アスナの好き嫌いの多さは昔からで、しかも筋金入りと来た。あのお兄さんが為す術もなく白旗を揚げたほどだ。よくオムライスを食べているのを見かけるが好物らしい。……兄を少しだけ思い出した。手が止まったあたしをスバルが見ている。この娘は昔から変なところで鋭いのだ。あたしは誤魔化すようにただ、思いついた話題を口にした。
「オムライスは好きよね、あの娘。お兄さんと一緒にこっちに来た時に、食べたって聞いたことがあるけど」
「小さい頃って、アス」
スバルがそこまで口にしたところで、食堂に入ってきた八神部隊長がスバルへと声を掛けた。食事中ではあるけれど緊急らしい。慌ただしく八神部隊長に付いていったスバルの背中を見送る。スバルが何を言いかけたのか気にはなったが、後で聞けば良いと考えパスタをやっつける為に食事を再開した。
今日も一日が終わる。だが、それは明日の始まりでもある。シャワーを浴びて重くなった髪を少しだけ煩わしく思いながら鏡の前へ座る。こうやって髪を下ろした姿を見ていると、アスナに似ている。あの娘が六課へ来たばかりの頃に後ろ姿だけで間違われたことが数回あった。聞けば、アスナもそうらしい。……唐突に違和感が襲ってきた。今日は、何かが──── おかしい。
よくわからない。何がおかしいのかも。だけど、あたしの頭は確実にそれをおかしいと言っている。思い出せと訴えかけてきている。こんな場合は必ずどこかにある筈だ。あたしがそう感じた物が。朝からの行動、情景、交わした会話を全て思考する。考えろ。考えろ。考えろ──── 気が付けば、あたしは寝間着のまま部屋を飛び出していた。
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