前途多難
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この年で素っ裸にされるとは思いませんでした」
「昔の経験上、騒ぐ奴らは一人一人を相手にするよりも、頭に命令した方が上手くいきますからね。それにどうせあなたがやらせたんでしょう」
「若いのに随分と人生経験が豊富なようですな」
「人の倍ほどはね」
渋い顔をしたアレスに、一瞬目を開いて、カッセルはお猪口を口にした。
上手いと朗らかに笑う様子に、アレスは苦笑する。
「それよりも、そちらこそ良いんですか」
「何がです」
「試していたなど、口にされて」
「よいでしょう。もう試す必要もない。少なくとも私はそう思いますな」
「理由を聞いても?」
アレスの問いに、日本酒を自分で注ぎながら、カッセルは再び口にする。
酒臭い息を吐けば、満足そうに微笑んだ。
「この席がその理由ではないですかな」
答えに対し、アレスは眉をしかめた。
周囲を見渡せば、誰もが嬉しそうに酒を頬張り、芸なども始まっているようだ。
思い思いに楽しむ様子を、カッセルは嬉しそうに見ていた。
「怒鳴りつけるか、迎合するか。それ以外の展開があったにしても私はこの宴会は、その時点で終わりだと思っていました。少なくとも楽しんでは飲めないだろうと……しかし、小隊長はこの辺境の惑星で宴会の席がどれほど貴重なものか理解してくださっていた」
「貴重な宴会なら、試そうと思わないで欲しいですけどね」
「自分の命を預ける上官なのです。貴重な宴会より重要なことですな」
「よく言いますね。命など預けるつもりもないくせに」
呟いた言葉に、カッセルは朗らかな顔を一変して、小さく目を開いた。
+ + +
「怒声をあげたら、新任にしては勇気がある。迎合すれば度量が大きい――理由をいろいろつけて、最後にはこういうのでしょう。小隊長になら命を預けられると」
グラスの中でウィスキーを回しながら、アレスは苦笑した。
「誰だって他とは違うと言われれば嬉しい。持ち上げてくれる部下を、死地に送りたいとは考えない。結局――あなた達は誰にも命など預けないでしょう」
カッセルを見もせずに呟く言葉に、カッセルが小さく唾を飲み込んだ。
手にした日本酒を見もせずに、じっとカッセルはアレスを見ている。
カッセルの言いたい言葉は良く分かった。
しかし、それを口に出せない。
だから、アレスはグラスで周囲を差した。
そこには思い思いに酒を飲んでいる隊員達がいる。
だが、各々の席では飲んでいても、誰一人アレスとカッセルに近づいてこようとはしない。
誰も移動をしようとしない。
何も知らない人間であれば、そういう席だと思うだろう。
だが、アレスは知っている。
通常の宴席というのがどういうものか。
「本来なら自分の命を預
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