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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十二話 良い思い出が無かったな
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れはテロ行為を防ぐためのものだったのだ。フィッツシモンズ准将も決まり悪げだ、彼女も私と同じ事を考えているに違いない。

「それとフェザーンに対してアルバート・ベネディクトを引き渡すようにと声明を出して要請してください」
「フェザーンが素直に引き渡すとは思えませんが……」
「その通りです、具体的にベネディクトの関与を示す物証は有りません。エルフリーデの自供だけです。フェザーンは関与を否定するでしょう」

オスマイヤー内務尚書とケスラー憲兵総監が懸念を表明した。公式声明を出してしまえば引き返せなくなる、引き渡しが無ければ面子が潰れる、そう思ったのだろう。だが宰相閣下は退かなかった。
「構いません、何度でも執拗に要請してください。こちらが怒っていると帝国にもフェザーンにも理解させたい」
オスマイヤー内務尚書とケスラー憲兵総監が顔を見合わせた。賛成は出来ないがこれ以上の反対も出来ない、そんな感じだ。

「ケスラー憲兵総監」
「はっ」
「フェザーンに居る憲兵隊の人間を使ってアルバート・ベネディクトを殺して下さい」
「それは」
皆が顔を見合わせた。引き渡しを要求しながらその対象者を殺す……。
「どんな手段をとっても構いません、必ず殺して下さい」
重苦しい空気が執務室に満ちた。

「アドリアン・ルビンスキーが口封じをした、フェザーン人にそう思わせる事でフェザーン人とルビスキーの間に不和を生じさせる、ルビンスキーの蠢動を抑える、そういう事でしょうか」
ケスラー憲兵総監が顔を強張らせている。宰相閣下が苦笑を浮かべた。

「それが最善ですが帝国が動いた、そう知られても構いません。帝国にちょっかいを出すのは危険だとルビンスキーとフェザーン人に理解させるのが目的です。追放者とフェザーン人を大人しくさせましょう」
「分かりました」

ケスラー憲兵総監の返事に宰相閣下が頷いた。そして私達を見渡す。
「帝国の安全を守り皆の安全を守るためなら私は悪評など恐れはしません。権力者に必要なのは信頼される事であって愛される事では無い。その覚悟の無い者は権力など求めるべきではない、私はそう思っています」

厳しい、そう思った。そして正しいのだとも思った。権力者の座に着くという事がどういう事なのか、今私は理解し始めている。かつて持っていた権力への憧れなどと言うものは今の私には無い。権力者というものは孤独で寂しい存在なのだ。得た権力が大きければ大きいほど孤独と寂しさは強まるだろう。

「伯爵夫人の御遺体は如何されますか? ミューゼル少将はフェザーンですが……」
オスマイヤー内務尚書が幾分か遠慮気味に問い掛けた。宰相閣下とミューゼル少将の関係が思わしくない事を知っているのかもしれない。

「私はここ一、二年の内に大規模な遠征軍を起こすつもりで
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