暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜悪夢編
第五十二話 良い思い出が無かったな
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
けが無表情にエルフリーデを見ている。

昨日も彼女はここへ来た。宰相閣下の最初の問いに彼女は答えなかった。精一杯の虚勢だったのだろう。もう一度問えば、脅せば彼女は口を開いた筈だ。だが宰相閣下はもう一日彼女を働かせろと命じた。エルフリーデが悲鳴を上げて話し始めても相手にしなかった。彼女は元帥府を泣き喚きながら連れ去られた。私とフイッツシモンズ准将はいささか酷いのではないか、そう宰相閣下を諌めたが口出し無用と言われ相手にされなかった。

宰相閣下がエルフリーデに近付いた、手には紙を持っている。その姿をエルフリーデが一瞬見たが直ぐに視線を逸らせた。
「エルフリーデ、これが何か分かるか? お前を相手にした男達が感想を書いたものだ。酷いものだな、金を返せと書いてある。あの世界では貴族である事等何の意味も無いらしい。他の感想も聞きたいか?」

エルフリーデが激しく首を横に振った。
「遠慮するな、今日も働く事になるかもしれないのだ。参考になるだろう、少しはまともな感想が書かれるかもしれない」
「止めて、お願いだから、それだけは止めて……」
エルフリーデが涙を流しながら哀願した。

「死にたいか?」
エルフリーデが頷いた。
「殺して欲しいか?」
また頷いた。
「では私に殺して下さいと頼むのだ」
「……殺して下さい」

満足だろうか、そう思ったが宰相閣下の表情には何の変化も無かった。相変わらず無表情にエルフリーデを見ている。
「フェザーンで偽のパスポートを用意した人間は?」
「……アルバート・ベネディクト」
「どういう人間かな?」
「商人だと言っていたわ」

宰相閣下がオスマイヤー内務尚書、ケスラー憲兵総監に視線を向けた。二人が頷く、既に何度か彼女がその名前を口にしているから調査済みだ。フェザーン自治領主府と関係の深い人物らしい、余り評判の良くない人物である事も分かっている。
「フェザーンの自治領主府との関係は?」
「分からない、何も言わなかった」

「コールラウシュ家と関係の有る商人か?」
エルフリーデが首を横に振った。
「ではリヒテンラーデ侯爵家との関係は?」
こちらの問いにも首を横に振った。
「面識は有ったのか?」
エルフリーデが三度首を横に振った。どうやら関係は全くないようだ。

「どちらから近付いた、お前から近付いたのか、それとも相手から近付いたのか?」
「向こうから……」
「何と言って近付いてきた?」
「帝国に戻してやると……」
「それだけか?」
エルフリーデが頷いた。宰相閣下が僅かに考えるようなそぶりを見せた。

「お前はフェザーンで私を殺したいと言ったか?」
エルフリーデが躊躇うそぶりを見せた。
「言ったのか?」
「……言ったわ」
「大勢の人の居る所でか?」
またエ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ