第二部 文化祭
Suguha's episode アリガト
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
△ABCと△DEFにおいて……」
「えっと、こう?」
「あー、違う違う。ここと、ここを……あ、そうそう! できるじゃないか」
俺なりに微笑んでみせると、直葉の顔は何故だか瞬時に真っ赤になった。直葉はサッとその顔を逸らした。
━━まったく、いつからこんなに生意気になったのか。
女子中学生は色々複雑、ということだろうか。なんだか少し、出会った頃のアスナと似てる気がした。
しばらくしてから、直葉が別の証明問題が解らないと言い出した。
「これか……これはな、三平方の定理ってやつを使うんだ」
「それってなんだっけ」
「おいおい……ちょっと貸してみ」
「え……」
俺は説明しながら、直葉のプリントの裏に答えを書いた。
問題集をすべて解き終わった頃には、直葉の機嫌はいつも通りに戻っていた。
「お兄ちゃん、意外と教えるの上手いじゃん。あたしの専属家庭教師やってよ」
「それならアスナに頼めよ。あーあ、すっかり遅くなっちゃったな……どうする? このまま寮に帰る? もしかしたら、優しいお兄ちゃんが頑張った妹に晩飯を驕っちゃうかもしれないけど」
「ほ、ほんとに!?」
"頑張った妹"は大きな眼をぱっと耀かせた。俺は苦笑いしながら答える。
「って言っても、お小遣いの範囲で、だけどな。なんでも驕るよ」
「わあー! あははっ、やった! ねーねー、どこ連れてってくれるの? いっぱい注文しよっと」
「い、いっぱいって……いま、夜8時だぞ。あんまりいっぱい注文したら、俺の財布が泣くし……なにより、スグの体重がとんでもないことに」
即座に殴りかかってくるだろう、と思っていたのだが、直葉は意外にもにこっと笑みを浮かべた。
「大丈夫だよー。あたし、運動いっぱいしてるから、そんなに簡単に太らないもん! さっ、行こ行こ!」
━━こりゃ、財布の中の福沢さんも今で見納めだな。
まぁ、仕方ないだろう。俺が言い出したんだし、直葉は頑張ったからな。
数ヵ月後の数学期末テストで、直葉は99点をとったらしい。すごいじゃないか、直葉。
「お兄ちゃん!」
直葉が、高得点のテストを持って走り寄ってくる。そして、殊勝に微笑んで言った。
「ありがと、お兄ちゃん」
<i1330|17691>
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ