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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第十九話「妖狐パニック」
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カンとした顔が、どこか笑えた。





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「ハッハハハハ! なんだ、つまりは俺に見捨てられると思ったのか」


「もう笑わないでください! 私だって勘違いだと知って恥ずかしいんですから!」


 あれからすぐにハクを部屋に連れて事情を聞いた。


 なんということはなかった。


 突如、変化が出来るようになったハクは自分の身体がおかしいのではと勘違いし、人間に化けれることを俺に知られたら嫌われるのではないかと思ったようだ。


 なぜ、そこで俺に嫌われると思ったのか不思議だったが、まあハクの過去を鑑みればそれも想像するに難くない。


 その変化はハクにとって至極普通のことであり、どこも変ではないことを説明すると。


 それまで、借りられてきた猫のように大人しかった――しおらしかった彼女は段々といつもの調子を取り戻しつつあった。


「しかし悲しいな。それしきのことで俺が嫌うと思うなんて。ちょっとは信頼されてきたと思っていたんだが」


「うぅ〜、千夜がいじめます……」


 恨めしそうな目で俺を見てくるが、このくらいは許してほしい。ちょっとだけ傷ついたのは本当のことなのだから。


「それで、説明してくれるんですよね?」


「ああ、そうだったな」


 さて、と気を取り直し、向かいに腰かけたハクに改めて目をやる。


 今も少女姿で腰かけているハクは、まだ若干の不安を宿した目を向けている。


「さっきも言った通り、その変化はハクたち妖狐にとっては普通のことなんだ」


 もともと妖狐は化けるのが得意であり、人間に化けては人を襲い、彼らの精気を奪って生活していたという。


 そのため、妖狐は成長し体がある程度出来上がると、自然と変化の仕方を身に着けるのだ。


「だから、ハクのその変化は出来るようになって当然のことなんだよ。なにもおかしなことはないさ」


「そうでしたか……」


 ようやく安心することができたためか安堵の吐息を零す。


 そんな彼女の頭を優しく撫でてやった。


「まあ出来るようになったのは最近のようだし、これからはスムーズに変化できるようになるのと、変化の維持を練習していこう」


「はい……」


 気持ちよさそうに目を細めるハクを眺め、俺も顔を綻ばせた。


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