第一章 平凡な日常
44、ジッリョネロ
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の日の記憶が甦る。
血に染まった部屋。
血の海に沈み、冷たく動かない両親。
消え失せた日常。
フラッシュバックのように次々と映像が脳を埋め尽くす。
「父さんと母さんさえ生きていれば……兄さんだって」
「要!」
バシッ
右頬に痛みが走る。
一瞬何があったのか全くわからなかった。
いつの間にか、アリアさんがオレを抱き締めていた。
「辛い思い出だったのね。思い出させてしまってごめんなさい」
「ア……リア……さん?」
オレの胸元に顔を埋めている。
シャツがしっとりと濡れていた。
泣いて……るのか?
「どうして泣くんですか」
「なら、どうしてあなたは泣かないの?」
「え……?」
何でオレが泣く必要があるんだよ。
別に、過去が変えられる訳じゃない。
死んだ人間が帰ってくる訳じゃない。
今さら嘆いたって、何にもならないってことを、オレが一番よく知ってる。
「悲しかったら、辛かったら泣いていいのよ? 一人で背負い込んでしまっても、何にもならないのよ」
「泣いたって、そんなことしたって何も変わらないじゃないですか」
「それでも、泣くのを堪えてしまったら、そしたら要が壊れてしまうわ。そんなの耐えられない。
だから、泣いていいの。その涙は、私が受け止めてあげるから。あなたは私たちの家族なんだから」
……ファミリー?
何でそんなことが言えるんだよ。
オレとアリアさんは、さっき会ったばかりの他人なんだぜ?
ただ、コスモを助けたってだけの……。
何でオレのこと家族だなんて言えるんだよ。
気付けば、涙が溢れていた。
8年前のあの日、どんなに辛くても泣かないと決めていたのに。
父さんと母さんが関わることじゃ、絶対涙を見せないって決めてたのに。
それなのに、こんなにも簡単に崩れちまうものなのかよ……ッッ。
「そうよ、泣きなさい。たくさん泣いて、後は笑顔でいましょう」
「うっ……あ……あああああぁぁぁああぁあぁぁああ!!!!」
次から次へと溢れる涙を止めることはできない。
父さんと母さんが死んだ日以来、初めてオレは人前で涙を見せ、声をあげて泣いた。
†‡†‡†‡†‡†‡
「本当に帰っちゃうの?」
「時間も遅いし、泊まっていって構わないのよ?」
森の入り口。
夕日も沈んだイタリアは暗い。
「そこまで迷惑かけられませんよ。それに、仕事バックレてきたんで」
「まぁ、そうなの?」
驚くように口元に手を当てるアリアさんだが、その目は笑っている。
失礼にも思えるかもしれないが、それはオレが笑っ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ