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気まぐれな吹雪
第一章 平凡な日常
44、ジッリョネロ
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の日の記憶が甦る。

血に染まった部屋。

血の海に沈み、冷たく動かない両親。

消え失せた日常。

フラッシュバックのように次々と映像が脳を埋め尽くす。

「父さんと母さんさえ生きていれば……兄さんだって」

「要!」

バシッ

右頬に痛みが走る。

一瞬何があったのか全くわからなかった。

いつの間にか、アリアさんがオレを抱き締めていた。

「辛い思い出だったのね。思い出させてしまってごめんなさい」

「ア……リア……さん?」

オレの胸元に顔を埋めている。

シャツがしっとりと濡れていた。

泣いて……るのか?

「どうして泣くんですか」

「なら、どうしてあなたは泣かないの?」

「え……?」

何でオレが泣く必要があるんだよ。

別に、過去が変えられる訳じゃない。

死んだ人間が帰ってくる訳じゃない。

今さら嘆いたって、何にもならないってことを、オレが一番よく知ってる。

「悲しかったら、辛かったら泣いていいのよ? 一人で背負い込んでしまっても、何にもならないのよ」

「泣いたって、そんなことしたって何も変わらないじゃないですか」

「それでも、泣くのを堪えてしまったら、そしたら要が壊れてしまうわ。そんなの耐えられない。
 だから、泣いていいの。その涙は、私が受け止めてあげるから。あなたは私たちの家族(ファミリー)なんだから」

……ファミリー?

何でそんなことが言えるんだよ。

オレとアリアさんは、さっき会ったばかりの他人なんだぜ?

ただ、コスモを助けたってだけの……。

何でオレのこと家族だなんて言えるんだよ。

気付けば、涙が溢れていた。

8年前のあの日、どんなに辛くても泣かないと決めていたのに。

父さんと母さんが関わることじゃ、絶対涙を見せないって決めてたのに。

それなのに、こんなにも簡単に崩れちまうものなのかよ……ッッ。

「そうよ、泣きなさい。たくさん泣いて、後は笑顔でいましょう」

「うっ……あ……あああああぁぁぁああぁあぁぁああ!!!!」

次から次へと溢れる涙を止めることはできない。

父さんと母さんが死んだ日以来、初めてオレは人前で涙を見せ、声をあげて泣いた。



†‡†‡†‡†‡†‡



「本当に帰っちゃうの?」

「時間も遅いし、泊まっていって構わないのよ?」

森の入り口。

夕日も沈んだイタリアは暗い。

「そこまで迷惑かけられませんよ。それに、仕事バックレてきたんで」

「まぁ、そうなの?」

驚くように口元に手を当てるアリアさんだが、その目は笑っている。

失礼にも思えるかもしれないが、それはオレが笑っ
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