メイドと少年と大佐と仲間達
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輩から学んでいないだろうな?)
なんて言葉を言うはずもなく、はめられた祝宴にヤンは足を踏み入れた。
「なつかしい香りですな。ソヨカゼV39を思い出しますな」
「ソヨカゼV39は相変わらず現役で働いているそうですよ」
「で、先輩。
俺達がここに来た理由はこの紅茶からも察してくれるとうれしいのですが」
人によってはキャリアの終点である大佐は、それゆえにかなり恣意的人事が行える場所でもあった。
何しろ主力艦の運用や戦隊規模の作戦立案が任されるのだ。
それゆえに、その人事権はある程度は配慮されるようになっていたのである。
ここでどれだけ人を見つけられるかで、ここで終わるかその後の出世が決まるかと言っても過言ではない。
「私はできればここで終わりたい人間なんだがねぇ」
「同盟議会であれだけ顔を売った以上、無理だと思いますよ。それは」
ヤンのぼやきをパトリチェフが容赦なくぶったぎる。
世間から見れば、ヤンは軍の不正を正し、優れた見識で帝国の意図を見抜いて主戦論を掣肘し、戦場から帰還した功績もある、トリューニヒト国防委員の覚えめでたいエリートの一人なのだった。
その為、ヤンの大佐昇進と戦艦セントルシア艦長就任が発表されると共に、自薦他薦のメールがヤンに押し寄せる羽目に。
読むのもいやになって、まだ時間があるからと戦艦の主要スタッフをまったく決めていなかったのである。
「まったく。
こんな形で押しかけて、私が断ると思わなかったのかい?」
「その前に、部屋が散らかって入れない方を心配していたんですよ。先輩。
あとついでに、セントルシアのスタッフが決まっているのならば、教えていただけませんかね?」
ヤン、後輩にも撃沈される。
元々この後輩は士官学校では奇襲などが得意だったが、その理由の一つに的確な状況判断能力の高さが上げられる。
効果的なタイミングで事を起こすのがうまいのだ。
「私の下で何がいいのやら」
「艦長の下だったら、確実に帰れそうだから。
それではいけませんか?」
アルテナの一言にヤンは深く深くため息をついた。
まぁ、決めないといけない事だから、仕事が片付いたと考え直したらしい。
「わかったよ。
パトリチェフ中佐には副長を、アッテンボローには戦術長を、アルテナ少佐にはまた航海長をやってもらおう」
「他のスタッフはどうするので?」
駆逐艦と違って、戦艦の運用には人員がかかる。
主だったポストは他にも、機関長や主計長、隊付参謀等があるのだ。
「そういや、ラップのやつ退院したんだっけ。
ラップのやつも呼んでみるか。
主計長として」
ヤンと同期で戦史研究科首席のジャン・ロベール・ラップは、病気療養があって
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