メイドと少年と大佐と仲間達
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「堂々と部屋の中央に積まれていると邪魔です。
ちなみに、この書籍の塔は前回もありましたし、動かされていませんでしたよ」
こういう時にアンドロイドは無敵だ。
何も言えずに撃沈されたヤンを尻目に、部屋の中から床が現れてゆく。
「そういえば、お父さんは元気かい?」
「はい。
キャゼルヌ准将の下で忙しそうに飛び回っています」
「私より、先輩の方が忙しいだろうになんであんなに家族サービスができるのやら……」
ヤンのぼやきもある意味当然で、シンクレア・セレブレッゼ大将が率いる後方勤務本部の実務全般を取り仕切り、その実務で戦場に出る事無く准将の椅子を手にしたのだから。
なお、彼も参謀コースの出世の間に艦長職を経験していたりするが、その艦が同盟軍の軍専用輸送船。
しかも、彼が艦長だったその船の航路の経済効率が数割上昇するという伝説までつくる始末。
ヤンの『忙しい』発言は先の緊急軍備予算の可決成立によって艦隊の更新が前倒しされ、旧式艦をフェザーンに有償譲渡する現場責任者だからに他ならない。
それほどのど修羅場なのにも関わらず、五時には家に帰り、休日は家族と過ごし、そして事務は不正も不明もなく適正かつ円滑に進んだというのだから恐るべし。
この一件にて、シンクレア大将は後方勤務本部初の上級大将に昇進する事になり、同盟軍の防衛戦における物資輸送の円滑化は常に帝国に対して優位に行えるようになる。
「お掃除終了です」
「本棚の分類と、移動させた本のリストをホームコンピューターに入れておきますね」
二時間後。
人を招くことができるまで綺麗に片付けられた書斎の中で、ヤンは魔法を見たかのように呆然とする。
そして、毎回思うのだ。
この二人魔法使いではないのだろうかと。
「お邪魔します。先輩。
生還おめでとうございます」
「ご出世おめでとうございます。
最初見たときどうなるかと思っていましたが、とうとう大佐ですか」
「生還および出世おめでとうございます」
掃除終了と共にベルが鳴るので開けた途端のお祝いの奇襲。
押しかけた元部下であるアッテンボロー少佐、パトリチェフ中佐、アルテナ・ジークマイスター少佐の来訪時の台詞に、付き合いが長い分我が後輩はこっちの性格をよく知ってやがるとヤンは苦笑しつつ部屋に招きいれた。
片付けられた部屋だからこそ安心して部屋に招くことができる。
「なあ、もしかしてこれは『お姉さま』の差し金か?」
『良ければ昼食も作りましょう』の一言で何でかユリアンと共に残っているメイドに向けてヤンが悪態をつく。
その返事ににメイドが持ってきたのはユリアン以外ならば飲みなれた、チャン・タオ退役軍曹の紅茶の香り。
(あのメイド、性格の悪さも先
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