暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第六四幕 「親子の在り方」
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見たセシリアは深くため息をついた。彼女にも彼女の想いがあるのだろう。例えそこに愛がなくとも、求められるものがあること自体、彼女にとっては羨ましいものなのかもしれない。
そんな感情や憶測の入り混じった思考を自分なりに言葉で纏めるなら、この言葉に尽きるか。そう思ったセシリアはこの陰鬱な部屋の空気を無視するように言い放つ。

「お互い碌な家庭ではありませんわね・・・とっとと自立しましょう?そして、いつか自分の家庭を持つ時はそうならぬようすれば良いのではなくて?」
「え・・・」

つららの表情が戻ってくる。その顔はさも驚いたと言わんばかりで、セシリアはそんなにおかしなことを言ったかと首を傾げた。その家庭が詰まらないと思うならとっとと出て行けばいい。何も求められないなら放り捨てればいい。自分がかくあるべきと思うのならば、(すべか)らくそれに従えばいい。自分は自分の意思にのみ従っていればいいのだ。
つまるところ―――セシリア・オルコットとはそういう人間である。今までも、そしてこれからも。自分を支配できる存在は、自分一人が居ればいい。

「・・・私はからっぽで、自分では決められません・・・自立、なんて」
「貴方は私の言葉に感銘を受け、変わったのでしょう?興味がないなら縁など切ってしまえばいいのです」

きっぱりと言いたいことを言い放つ。本人が言うように、その過程にいたころのつららは空っぽだったのだろう。しかしセシリアは、今のつららは既に自分の意思に従って動ける人間であると信じている。

そこに躊躇いがあるのなら、その躊躇いを自分の意思の刃で両断してしまえ。

セシリアはつららにそれをできると信じている、と言っているのだ。その言葉を頭の中で反芻させたつららは、一転いつものこちらが鬱陶しく思えるほどの笑顔を咲かせた。

「・・・・・・お姉さまっ!私・・・私、やっぱりお姉様に一生ついていきますぅぅ〜〜〜!!」
「ちょっと、それでは現状と何も変わらな・・・だ、か、ら!胸に顔をうずめないでと・・・ひゃあっ!?頬ずりはおやめなさい!!止めてったら!!」

セシリアの胸に飛び込んだつららとそれを引き剥がせないセシリア、割とよくあるいつもの構図だった。そしてつららがいつもの元気1,5割増しであることを除けば、それは先ほどまで陰鬱な話をしていたとは思えないほどにいつも通りの光景である。


つららは思う。
自分はやっぱりからっぽだ。
でも、セシリアが信じていると言ってくれればそれを糧にブリキ人形は動き出す。
それを自我と呼べるのならば―――

―――私は峰雪つららと言う一人の意思を持った人間だと、声高らかに宣言しよう。
つまるところ、峰雪つららというのはそういう人間である。
 
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