暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第六三幕 「覆水は盆に返らずとも」
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無い。いや、下手をすれば一生ものの遺恨を残してしまうかもしれない。そうなれば、自分はもう簪に二度と近づかないようにするくらいの覚悟はあった。
謝罪の言葉がそれ以上見つからず、無言のまま顔をあげたシャルの目の前には―――

「ヒーローは、罪を憎んで・・・人を憎まずが、基本」

無駄に誇らしげで妙な自信にあふれた、でも不思議と絵になる笑顔でサムズアップする簪の姿が映った。

over spilt milk、零れ落ちたミルクは二度と戻ってくることは無い。だが、盆にもう一度ミルクを注ぐことは出来る。一度零したからこそ、再び注いだミルクを大事に思う気持ちが芽生える。絶対に守られる友情など無いのだ。大親友と呼ばれる人間でも、そこに至るまでに何度も盆の中身を零してしまった筈だ。

シャルはこの日、次はこの笑顔を曇らすまいと居もしない神に誓った。




「そういえば・・・」
「ん?」
「名前」
「名前・・・?」
「呼び捨てにした」
「・・・あ、ああ。あの時は必死だったからね・・・次からはちゃんと気を付け・・・」
「ダメ」
「えっ・・・?」
「呼び捨てじゃなきゃ・・・ダメ。鈴だって、呼び捨てなのに・・・ズルイ」
「ズルイって・・・いや、分かったよ簪。これでいい?」
「・・・うん」
(・・・僕が笑顔護る必要ないかもね)

嬉しそうに微笑む簪と気恥ずかしさに顔を赤くするユウ。簪は今まで友達らしい友達がいなかったから、ユウと鈴の呼び捨てと言う行為を羨ましく思っていたようだ。しかし、男相手にそんな微笑みを向けるというのがどういう意味に取られるか、彼女は分かっているんだろうか?
前にユウが「簪の“友達”としての距離の取り方はちょっと行き過ぎてるような気がする」とぼやいていたのを思い出す。果たして彼女がああいった態度を取るのはユウが男女の意味で特別に思っているからか、それとも本人がその辺に考えが及ばないせいか・・・

「顔、赤い。熱がある?」
「いや、何でもないよ・・・大丈夫だから」
「・・・怪しい」

そう言うや否や、簪は自分の額とユウの額をコツンとくっつけた。唯でさえ顔を見るのが照れ臭かった簪の顔面が文字通り目と鼻の先まで迫る。自分の顔が映り込むほど透き通った瞳、空気に乗ってふわりと近づくシャンプーの香りがユウの羞恥を加速させ、顔がさらに熱を持つ。さっきは顔を近づけられて恥ずかしがっていたくせに自分が人にするのは然程(さほど)抵抗がないようだ。

「ちょちょ、ちょっと簪!?」
「さっきの・・・仕返し。やっぱりユウ、熱がある」
「へ?いやこれは熱がある訳じゃなくてちょっと血流が良くなってるだけで・・・」
「何もしてないのに、血流が急によくなったりしない」

ずずいと迫る簪。ギプスのせいで思うように逃げら
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