暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第六三幕 「覆水は盆に返らずとも」
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僕自身の意思だ」
「・・・うん」
「だから簪ちゃんは必要以上にこの怪我を気にすることは無い。分かったね?」
「・・・分かった。分かったけど、その」

真剣なのは伝わるのだが、もうこのままキスされるんじゃないかと言う顔の近さはどうにかならないのか。当然ながら本人なりに大真面目なユウは簪の心中など気付いていない。

「ほら、ヒーローものだって洗脳された味方を助けるために傷つくのは定番だろ?そういうもんだと思えば・・・」
「あの、ユウ」
「何?」
「顔・・・近い。さすがに、恥ずかしい」
「・・・・・・・・・あ」

そこでようやく自分の紳士にあるまじき失態を悟ったユウは慌てて簪の肩を離した。いくら友達とはいえ女の子にこんな風に詰め寄っては変な勘繰りをされても文句が言えない。自分の行為を省みて羞恥心がこみ上げてきたユウは両掌を振りながら慌てて謝罪する。その姿が可笑しくて、簪の悪戯心が刺激されてしまう。

「ご、ごめん簪ちゃん!別にやましい気持ちがあったわけじゃないんだ!」
「・・・許さない」
「うええ!?そ、そんなぁ・・・」
「すけべ」
「違うってば!そんなつもりでしたわけじゃ・・・」
「突撃ばか」
「ここぞとばかりにひどいこと言うね・・・」

思わぬ口撃に肩を落とすユウに一通り満足した簪は、ふとそこで保健室を覗く視線に気付いた。腐っても更識、気配を消してはいるがそれに気付けない彼女ではない。

「・・・だれ?」
「あ・・・」

気付かれたことを悟ったその人物は一瞬逃げようかと身を翻しかけ、少しの間をおいて、ゆっくり保健室の中に入ってきた。そこにいたのは簪を強引にパートナーに仕立て上げたシャルロット・デュノア。今回の一件の首謀者であり、加害者とも言える人物。
シャルは直ぐに簪の隣にいたユウの顔色を伺う様におずおずと近づいてくるが、ユウの顔に不快感や怒りは無い。既に謝られているから、彼の中では終わったことなのだ。

「・・・・・・シャルロット、ううん、シャル」
「ぁ・・・・あの。・・・今更虫がいいと思うけど・・・ごめん、なさい」

ゆっくりと頭を下げたシャル。その表情は重力に従って垂れた前髪の所為で伺えないが、その姿は悪戯がばれて怒られる直前の子供の様に小さく見えた。
シャルが簪に何をしたのか、簪自身はまだよく知らない。自分の様子がおかしかったことやシャルに不信感があったことは分かっていても、具体的に何をどうされたのかは知らない。だけれども、真実がどうあれ簪の言う言葉は決まっていた。

「シャル」
「・・・ごめん」
「聴いて、シャル」
「・・・」

洗脳とは、その人の意思を、信念を、個が個たる所以である心を歪める最低の技術だ。それを分かっていて使った自分は二度と信用されなくてもおかしくは
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