二幕 エルの妹
4幕
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「行っちゃった……何かあったのかな」
レイアが離れた座席を覗こうと席から身を乗り出している。ルドガーはエルに膝を貸しているので動けない。
その辺りはジュードとレイアに任せようと考えていると、寝ていたエルが薄く目を開けた。
「ごめん。起こしちゃったか――」
「……て」
「え?」
「いって、あげて。ないてる、よ」
エルは寝ぼけ眼のまま、されどルドガーをしっかり見て言った。そして、再び目を閉じて眠りの世界に戻って行った。
(行って、って言われても。膝枕中だし、やめた拍子に起こすのは気が引けるし。どうしたもんか)
膝で眠るエルと、フェイが去って行った通路を交互に見やって。
ルドガーはエルと座席の小さなスペースに腕を差し入れ、そっとエルの上体を起こし、膝枕を脱け出した。
「ルル。頼む」
「ナァッ」
ルルがエルの頭の位置に来て、ぽてっと横になる。エルの頭はルルのたぷたぷした腹に預けられた。
「これ、ルルは大丈夫なの?」
「無駄に体脂肪ついてないからな。なあ、ルル?」
「ナァ〜!」
失礼だ、といわんばかりの鳴き声。だがルドガーは知るもんか、である。太らせたのは兄だ。ジュードもレイアも苦笑した。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
一つ手を振り、ルドガーはフェイが去った方向へ歩き出した。列車の揺れに気をつけながら。
デッキに出るが、フェイはいなかった。
アハルテケ号には展望室はないから、もっと先の車両に移ったのだろうと予想して車両を進んでいく。
最後尾の車両のホールデッキに出て、ルドガーはようやくフェイを見つけるに至った。
デッキの隅で項垂れているフェイに恐る恐る声をかけてみた。
フェイははっとしたように顔を上げてルドガーを見返した。ふり返った拍子に色のない髪が揺れて、赤い眼が一瞬あらわになった。
「パ……ルド、ガー」
「どうした? 気分悪くなったか?」
「分かんない。ココが、キリキリする」
フェイは自分の胸の谷間に手を当てた。
「胸の病気があるのか?」
「ない」
「列車で酔った?」
「ううん」
ルドガーは困って頭を掻いた。どこも悪くないのに不調を訴える人間が目の前にいて、どうしてやればいいのかの手がかりがない。
「――ルドガーは、列車着いたら、お別れ、なんだよね」
「ああ。いや、マンションまでは送ろうかと思ってるけど。会ったばかりの男に家知られたくないっていうなら、駅までで全然構わないけど」
フェイははっと顔を上げた。前髪がずれ、赤眼があらわになる。
その目は、棄てられる直前の小動物のようだった。
「いや、一人で帰るのが怖いならちゃんと送るからっ、うん」
「――ちがう。分か
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