第40話 「番外編 ちょっとだけ前の事」
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を貫いた。
「知ってたか? 皇帝っていうのはな。古来一番強かったろくでなしの、成れの果てだ」
皇太子の声が聞こえる。
皇太子が何かを言っている。
女に向けられたものではないらしい。
人一人殺しながら、この場にいない誰かに向かって話している。
「結局、俺もあいつらも性根の腐ったろくでなしだ。なら、ろくでなしはろくでなしらしく。好き勝手にやらせてもらうぜ」
女が事切れる寸前、そんな言葉を耳にした。
■ ■
ルードヴィヒが血を滴らせながら、地上に戻ったとき、ノイエ・サンスーシはいつも通りだった。
何も変わっていない。
貴族は笑いさざめき、いつも通りの魑魅魍魎の跋扈する宮廷でしかなかった。
皇太子が死のうが生きようが、何も変わらないのだろう。
いや、皇太子が死んだとき、きっと原作の銀河英雄伝説が始まる。
ラインハルトやヤン・ウェンリーの活躍する物語。
ルードヴィヒは壁にもたれながら、そんな事を考えていた。
「悪いが、お前らの出番はなさそうだ。そう簡単に死んでやるものかよ。好き勝手させてもらうぜ」
そう呟くと、ルードヴィヒは歩き出した。
広大で壮麗なノイエ・サンスーシの廊下に、血を滴らせながら……。
自らの足跡を刻むように歩く。
その後には流れ落ちる血が点々と続いていた。
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