暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第40話 「番外編 ちょっとだけ前の事」
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
足を狩られる。
 転がり逃げる女を追いかけ、皇太子の足が蹴りを放つ。
 ぞくりと産毛が逆立った。
 戦慄にも似た気配が背筋を駆け抜ける。
 女は受け止められないと、とっさに判断し、自ら倒れこんだ。
 空を蹴る足が通り過ぎた。
 皇太子の体勢が崩れる。
 軸足を絡めとろうとしたとき、皇太子が飛んだ。
 女の思惑に気づき、逃げたのだ。
 それでも隙ができた。その隙に女は立ち上がる。
 転がる皇太子に向かい、今度は女が蹴りを放つ。
 かわされた。
 同じように倒れこんだのだ。
 だが違うのは、下から蹴りを放ってきた事だ。
 しかし、かわせる。
 女は首を振ってかわす。
 かわされた筈の足が、女の首を引っ掛けるようにして、横転する。
 皇太子が自ら転がった。
 その動きに巻き込まれ、女の体も動く。
 グキッと首の骨が軋む。
 二人して倒れこんだ。
 こんな部屋の中でなければ、抱き合っていちゃついているようにも、見えただろう。
 ただやろうとしていることは、殺し合いである。
 皇太子の肘が女の胸部を打つ。
 ギシッと骨の砕ける音が聞こえた。
 折れた骨が肺に突き刺さり、女は血を吐いた。
 同時に足が跳ね上がる。
 狙いは金的だった。

「ぐぅっ」

 皇太子の口から初めて、悲鳴にも似た声が漏れる。
 拳で足を迎え撃つ。
 指が折れた。女の足の指も折れた。
 勢いを失った足を掴み、捻る。
 靭帯が音を立てて、引きちぎられる。
 女の体が引き攣ったように痙攣していた。
 皇太子が跳ね飛ばされる。

「殺す殺す殺す殺す」

 うわ言のように女が呟いていた。
 口からは血と涎が混じったものが、滴り落ちる。
 奇声を上げる。
 足は奇妙な形に、捩れている。
 とても走れまいと思われるのに、走っていた。
 女をかわした皇太子が背中を叩く。
 倒れ転がった女の手元に、指にブラスターが触れた。
 笑みが浮かぶ。
 蹲った女は、素早くブラスターを抱え込む。
 皇太子は動かずに、その場で立っている。

「けっけっけっけっけっけ」

 奇声とともに振り向いた女の手には、ブラスターが握られ、いきなり引き金を引いた。
 光が皇太子の腹を貫く。

「あ、がぁ……てめえ……やりやがったな。良い度胸だ」

 倒れこんだ皇太子が転がりながらも、ブラスターの火線から逃れようとする。
 それを追いかける火線。
 逃げ回っていた皇太子の手にも、ブラスターが当たった。
 仰向けになった皇太子の手に、ブラスターが握られ引き金を引かれた。
 ブラスターの火線が女の体を貫く。

「……あ、がぁ……」

 火元に向かい、引き金を引いたが、そこにはすでに皇太子の姿はない。
 再び光が女
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ