第40話 「番外編 ちょっとだけ前の事」
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足を狩られる。
転がり逃げる女を追いかけ、皇太子の足が蹴りを放つ。
ぞくりと産毛が逆立った。
戦慄にも似た気配が背筋を駆け抜ける。
女は受け止められないと、とっさに判断し、自ら倒れこんだ。
空を蹴る足が通り過ぎた。
皇太子の体勢が崩れる。
軸足を絡めとろうとしたとき、皇太子が飛んだ。
女の思惑に気づき、逃げたのだ。
それでも隙ができた。その隙に女は立ち上がる。
転がる皇太子に向かい、今度は女が蹴りを放つ。
かわされた。
同じように倒れこんだのだ。
だが違うのは、下から蹴りを放ってきた事だ。
しかし、かわせる。
女は首を振ってかわす。
かわされた筈の足が、女の首を引っ掛けるようにして、横転する。
皇太子が自ら転がった。
その動きに巻き込まれ、女の体も動く。
グキッと首の骨が軋む。
二人して倒れこんだ。
こんな部屋の中でなければ、抱き合っていちゃついているようにも、見えただろう。
ただやろうとしていることは、殺し合いである。
皇太子の肘が女の胸部を打つ。
ギシッと骨の砕ける音が聞こえた。
折れた骨が肺に突き刺さり、女は血を吐いた。
同時に足が跳ね上がる。
狙いは金的だった。
「ぐぅっ」
皇太子の口から初めて、悲鳴にも似た声が漏れる。
拳で足を迎え撃つ。
指が折れた。女の足の指も折れた。
勢いを失った足を掴み、捻る。
靭帯が音を立てて、引きちぎられる。
女の体が引き攣ったように痙攣していた。
皇太子が跳ね飛ばされる。
「殺す殺す殺す殺す」
うわ言のように女が呟いていた。
口からは血と涎が混じったものが、滴り落ちる。
奇声を上げる。
足は奇妙な形に、捩れている。
とても走れまいと思われるのに、走っていた。
女をかわした皇太子が背中を叩く。
倒れ転がった女の手元に、指にブラスターが触れた。
笑みが浮かぶ。
蹲った女は、素早くブラスターを抱え込む。
皇太子は動かずに、その場で立っている。
「けっけっけっけっけっけ」
奇声とともに振り向いた女の手には、ブラスターが握られ、いきなり引き金を引いた。
光が皇太子の腹を貫く。
「あ、がぁ……てめえ……やりやがったな。良い度胸だ」
倒れこんだ皇太子が転がりながらも、ブラスターの火線から逃れようとする。
それを追いかける火線。
逃げ回っていた皇太子の手にも、ブラスターが当たった。
仰向けになった皇太子の手に、ブラスターが握られ引き金を引かれた。
ブラスターの火線が女の体を貫く。
「……あ、がぁ……」
火元に向かい、引き金を引いたが、そこにはすでに皇太子の姿はない。
再び光が女
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