第40話 「番外編 ちょっとだけ前の事」
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っくりと開かれていく。
振り返ると女官姿の女と目が合う。
黒い髪。鋭い眼光。引き攣ったような口元。暗殺のために訓練された者特有の、荒んだ気配。
ルードヴィヒの口元に笑みが浮かぶ。
楽しげな笑みを見た女の動きが、一瞬戸惑ったように止まった。
その隙を逃さず、ルードヴィヒは脱出口に飛び込む。
狭い空間の中を、ガラガラと音を立てて落ちていく。
頭上をブラスターの火線が通り過ぎていった。
女も飛び込んでいたようだ。狭い空間を二人が落ちていった。
一足先に、底に到着したルードヴィヒがそばにあった銃を手に取る。昔使っていた火薬式とは違うが、グリップはスッと手に馴染んだ。
「舐めんなっ!!」
脱出口に向かって引き金を引く。
幾重にも重なり、貫く光。
この程度で死ぬとは思っていない。
ただ黙って殺されるような甘ちゃんと、思ってもらっては、困る。
そして再び、ルードヴィヒは姿を隠した。
■ ■
女が底に到着した。
暗い部屋の中にルードヴィヒの姿はない。
見えなかった。
舌打ちをした。
「こそこそと逃げ回るとは、それでも銀河帝国皇太子かっ!!」
女があざけるような声を上げる。
馬鹿にした声だ。
だが部屋の中からは、物音一つしない。
うまく気配を消している。
バカにされて、それですぐに頭に血が上って、飛び出してくるような門閥貴族のバカ息子と、皇太子は違うようだ。
それどころか場慣れている。
女の顔に、初めて緊張が浮かび、首筋に汗が流れ出す。
一歩、足を踏み出した。
足のつま先に、鋭い痛みが走った。
目を向けると、そこには鋲が撒かれている。尖った先を上に向けられて撒かれている。
殺意。
女は皇太子が、自分を殺そうとしている事を感じた。
抵抗しているのではなく。殺し合いをする気なのだ。
自分が狩る側ではなくて、狩られる側になった事を初めて知った。
女の顔に怯えが走る。
足が竦んだ。
それでも引き金を引く。
皇太子の姿は見えない。
だが反射音で居場所が分かった。
「そこかぁ!!」
女が吠えた。
痛みを堪え、憎しみに彩られながら、女は走る。
薬を使っているのか、調度品を素手で、破壊しながら皇太子に向かい走る。
鏡を打ち壊す。
銀面が砕け散った。
女の目に飛び込んできたのは、拳だった。
みちっと嫌な音が聞こえる。
骨を砕く音ではない。肉を打つ音だ。
鼻が潰された。
呼吸が苦しい。
「がぁっ!!」
女の足が跳ね上がった。頭上から襲い掛かる。
皇太子が左腕一本で、女の足を受け止めた。笑みが浮かんでいる。
「ぼけっ」
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