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レンズ越しのセイレーン
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Report10 ハルモニア
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・》」

 刀を突き出す。一歩を力強く踏み出す。
 ぶつ、ずぶ、と慣れた感触が、刀身が確実にビズリーの心臓を貫いたことをユリウスに教えた。

 いつかどこかの分史で。まだ自分とユティの関係を知らなかった頃。クルスニクに産まれた身の上を辛く思わないのかと試しに訊いたことがあった。答えて、ユティは滅多に見せない大輪の笑顔で――

「俺とルドガーをこの世に産んでくれて、ありがとう」

 耳元に言って、刀を抜いた。
 ビズリーは傷口からわずかに血を噴き、どう、と倒れた。二度と起き上がることはなかった。

(これでいい。親殺しの十字架なんてルドガーは背負わなくていい。お前に悪いモノは、俺が全部持って行く)

 ふり返る。痛ましげにこちらを見るルドガーと目が合った。

 ユリウスは弱くだが笑ってみせた。きっとあの子――ユースティア・レイシィであれば、ここで笑うに違いないから。

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