第五話
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「彼女は昨日、この二センチFLAK三八の指揮を執っていました。勤務終了直前、正体不明機が接近を探知しました」
――あ、もう流れ読めたかも。
リーラは腕組みをしながら厳しい目をエーファに向けている。
「警戒態勢が敷かれていたのは確かですが、確認を怠るなと通達もありました。近日中に式森様がこちらにいらしてくることを承知していたからです。ところが、エーファは接近していた不明機に対してやみくもに発砲したのです」
――うん、この際俺のスケジュールを把握していたのは脇に置いとくとして。
やはりか。むしろエーファらしいかもと思わず納得してしまった。
「も、申し訳ございません……!」
エーファが思いっきり頭を下げた。
「ちょっ――」
「知らぬこととはいえ、式森様の乗機を狙うとは大変な不祥事です。どうか、お許しください!」
「メイドたるもの、ご主人様に対する忠誠は絶対不可欠であり不可侵のもの。それを分かっているのか」
「……はい」
「なのに銃器を向けるとは、神をも恐れぬ暴虐。運よくこうしてお会いできたから良いものの、一つ間違えば大けがでは済まない事態を招いたんだぞ」
「面目ありません……」
「しかも、聞けば式森様をお部屋に案内する時、粗相があったというではないか」
「転んだだけだけどね」
小さい声で突っ込んだがエーファは小さくなる一方だった。
「おっしゃる通りです。どのような罰でも受けます。どうかお許しを」
「と、申しておりますが」
リーラがこちらに振り返る。
「いや、罰って言われてもね」
墜落したのは確かだし、あの時は襲撃者を血祭りにあげてやると固く誓っていたのも事実。
しかし、こんな気落ちして今にも泣きそうなエーファを前にすると、そんな誓いも簡単に崩れ去ってしまった。
正直、見ているだけで気の毒だった。
「……まあ、いいんじゃない?」
「いけません式森様」
リーラがたしなめるように言ってくる。真っ直ぐ俺の目を見つめながら諭すように語りかけてきた。
「信賞必罰は世の習い。それはメイドも同じです」
「でも俺は無事だしなぁ」
「次期当主として権威をお見せになるチャンスです。なんらかのお仕置きを」
「お、お仕置きって」
顔が赤くなる。ガスマスクがあるから見られることはないが、そわそわした雰囲気が漏れ出てしまう。
これもそれも、例のお仕置き部屋を見てしまったせいだ。十八歳以下お断り、良い子は見ちゃダメよの妄想が靄のように脳裏にこびり付く。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ