暁 〜小説投稿サイト〜
まぶらほ 〜ガスマスクの男〜
第五話
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の娘はこんなに熱が入っているんだろうか。わざわざメイド長がすることもないと思うんだけど……。


 そう思いはしても口にはせず、ただ頷いた。


 リーラは嬉しそうに微笑んだ。


 階段を下りると正面ホールに案内された。入ったときにも思ったが、広くて豪奢で、如何にも金がかかっているといった風情だ。


「この城はご主人様が自ら図面を引かれて建設されたものです」


「へぇ、それはすごいね」


「石は南米産、木材はカナダから取り寄せましたが、職人はヨーロッパから呼び寄せました。内装は王室御用達の職人の手によるものです。丸二年かけて建設されました」


 それはなんというか、凄いことするね……。


「ご主人様は大したことないと仰っていました。老後の楽しみにと建設されたものです」


 老後の何を楽しみにしてるんだろうか。


 ホールを出て隅にある小さな扉を開ける。


 そこは階段になっており、どうやら地下に通じているようだった。


 リーラが先頭に立ち階段を下りていく。壁には燭台が埋め込まれており足を踏み外すことはないようだ。


 黙々と降りるとリーラが壁のスイッチを入れる。


 ワイン倉のようだった。ただ、南洋ということもあってやけに湿気がある。壁に沿って鉄製の扉が並んでいた。


「それで、ここは?」


「ここは地下室です。当初は食料庫として活用していました。捕虜を収容することもできますので水銀旅団を捕まえた暁には、ここに監禁するつもりです」


 中を覗いてみる。


 十畳ほどの空間。地下室のため窓はなく、足元はじめじめしている。確かにここなら監禁部屋としても活用できるだろう。体力より精神が先に参りそうだが。


 リーラがフックにかけられている鍵束を手に取った。手前の扉が開けられる。


「……え?」


 狭い部屋だった。照明がないため見難いが、壁から鎖がぶら下がっているのが目に入った。


 リーラがすぐに扉を閉めた。


「失礼しました」


 やや顔を赤らめている。


「間違った部屋をお見せしました」


「ねえ、いま鎖が見えたんだけど」


 鎖の先には鉄製の輪っかがつけられ、明らかに拘束具の一つだった。


「こちらをお見せするべきでした。申し訳ございません」


「いや、それよりあの部屋って……」


「――あの部屋は、その、ご主人様がメイドへのお仕置き部屋として考えられたものでして」


「お仕置き部屋!? 三角木馬とか鞭とか鉄球とかあったけど! 拷問部屋の間違いじゃないの!?」


「ご安心ください。一年前から使用していません
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