歓迎
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
同盟基地司令クラナフ大佐の値踏みする視線と、副官メルトラン中佐の出迎えで、アレスの新生活は始まった。
任務について尋ねても満足な答えは返ってこない。
とりあえず、最初は小隊に慣れるように命令が下される。
司令たちも戸惑っている。
最前線に卒業したての人間が配属される事などあり得ない。
小隊長と同じような任務を与えて、満足な結果なぞ望むべくもなく、かといって遊んでいていいと言えるわけもない。
こうして、時間を稼ぐつもりで与えられたのだろう。
命令に対して敬礼を行い、部屋を後にしようすれば、髭を蓄えた初老の男性がアレスに声をかけた。
「ここでは学校とは違い、常に死が隣にある。気をつける事だ」
「それは、既に経験済みです、大佐」
「本当に理解していればいいがな」
アレスの言葉に対して、クラナフは鼻で笑った。
「上とは分かっているといいながらも、なかなか現場を理解しないものだ。私も随分と苦労した」
現場第一主義と評したワイドボーンの言葉を思い出す。
なるほど、確かに司令官は士官学校出のアレスには良い印象を持っていない。
机の上で腕を組みながら、クラナフは静かに言葉を口にした。
「上は現場に死ねと命令する。敵基地を攻略して、死者が数十ならば御の字だと。だが、実際に上が死ぬ一人の事を一度でも理解した事があるのか……葬儀に出る残された者たちに頭を下げたことなどない。ただ戦果だけが結果となってな」
「……」
「これから君は上に行くだろう。だが、数字だけで全てを判断する人間にはなって欲しくない」
「覚えておきます。では、失礼」
敬礼で答えて、アレスが退出する。
しばらくして、髭面の男性が脇に控えていた副官に顔を向けた。
四十ほどの壮年の男性だ。
強面のクラナフとは違い、どこか控えめな事務官風の男だ。
さてと呟き、腕を組めば、背もたれに身体を預ける。
体重が集中して、椅子が軋んだ音を立てた。
「小生意気に。どう思う、メルトラン中佐」
「まだ出会ったばかり。ましてや士官学校を卒業したばかりでは、判断も出来ないでしょう。噂だけは聞きますが、それが事実かどうかは分かりかねます」
「まったく、上の考えることは、分からない事ばかりだ。こちらに迷惑ばかりを押しつけだけで、こちらの苦労を考えようとはしない」
呟いた言葉で、気付いたようにメルトランを見て、クラナフは謝罪を言葉にする。
「すまない、非難しているつもりはない。君は良くやってくれている」
「気になさらないでください、大佐。私は上からすれば現場に染まったはみ出し者。実際に同期に比べれば昇進も遅いし、このまま前線か後方基地の転勤生活でしょうな」
「あまり自分を卑下するなといいたいが、私も似たような
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ