歓迎
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
った。
惑星を中央において、赤色の文字が周囲を囲む、企業のロゴが眼に映る。
それはフェザーンを資本とする巨大企業の名前だった。
アース。
原作では名前すら存在しない――だが、確実に同盟はもちろん帝国にすら名前の知られ、食い込んできている。
そのロゴをゆっくりと手でなぞり、アレスは苦笑した。
気をつければいいのは、決して原作の敵だけではなさそうだ。
+ + +
惑星カプチェランカBV基地。
人払いを行った司令官室で、白髪の男は静かに息を吐いていた。
ツェーザル・ヘルダー。
この基地の司令官であり、全ての権限を手にしている男だった。
年は五十を半ば過ぎており、退役までは幾ばくも無い。
この年齢と階級であれば、帝都で勤務して、残る軍隊の生活を全うしているであろう。しかし、貴族ではないということから、いまだに最前線の地で司令官の職についている。
帝都に残してきた家族と最後に会ったのは、どれほど前であろうか。
戻りたいと考えていても、それはこの地では敵わない。
どれほど敵を倒そうと、基地を破壊しようと、帝国からすれば最前線とはいえど、一つの惑星の一つの基地でしかない。
単純な計算の話。
同盟基地を完全に破壊したところで、自由惑星同盟の兵は千にも満たない。
宇宙艦隊で巡航艦一隻を破壊する戦火にすら及ばないのが現実である。
おそらくは退役までの年を数えながら過ごすしかないと諦めかけていた時、新任の幼年学校の生徒の赴任とともに与えられたのが、一通の手紙だった。
それは決して表立っては見せられない。
ベーネミュンデ侯爵夫人から届けられた命令だ。
手紙に再び目を通して、ヘルダーは内容を確認した。
そこには先日赴任した金髪の小僧を殺す事ができれば、帝都への帰還とヘルダーの出世を約束するというものであった。
内容を確認すれば、手紙を閉じて、周囲に目を光らせる。
大丈夫だ。
誰もいないことは、何度も確認している。
この部屋にはヘルダー一人しかおらず、この事を知っているのは、この基地では自分だけである。
もっとも、あの侯爵夫人であればヘルダーが裏切らないか監視する人間が紛れ込んでいてもおかしくはないが。
いや、紛れ込んでいるだろうと、ヘルダーは思う。
もしこれが表沙汰になれば、ベーネミュンデ侯爵夫人は少なからず被害を受ける。
ヘルダーが裏切ればどうなるか。
事故死に見せかけられて、手紙は回収される。
おそらくは二度と家族には会えない。
ヘルダーは机の脇に置いた写真をなぞった。
そこには笑顔で映るヘルダーの妻と子供の姿がある。
あえなくなって久しく、もはや写真だけの顔がヘルダーにとっては妻の顔だ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ