歓迎
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ものか」
クラナフの自嘲めいた笑い声が響いた。
鳴り響く風の音に窓へと目を向ければ、叩きつけるような雪が強化ガラスの窓を揺らしていた。硬質的な金属と土壁で出来た壁や吹きつける雪景色ではなく、外の景色を見たのはいつ振りだろうか。
立ち上がって窓に近づき、手をかけた。
ひんやりと冷たい強化ガラスははめ殺しであって、開く事などできない。
開けば、その瞬間マイナス十数度もの冷気が身体を襲い、肺まで凍りつかせる。
極寒の環境にも関わらず、兵士達は十分にむくわれているとは言い難い。
大佐までの地位に来れば、それが容易ではない事は理解できている。
ハイネセンですらインフラによる事故が多発している中で、軍にだけ予算をかけることはできない。しかし、そんな予算は現代戦のために主に艦隊の整備にとられて、兵士の生活環境にかけられるお金は極僅か。
そんな僅かなお金ですらも主戦論が幅を利かせる本部に吸い取られている。
――そんなに戦争がしたいのであれば、最前線で戦い続けて見ろ。
そう呟いた言葉は、音にはならない。
クラナフが、大佐の地位を持つ人間が言うにはあまりにも不適切な発言だからだ。
窓から目を離して、出ていった新任の特務小隊長を思った。
アレス・マクワイルド少尉。
士官学校での最終成績は八位と一桁に入る優秀な成績。
射撃技術と艦艇操縦の成績が足を引っ張らなければ、主席にも匹敵しただろう。
昨年の士官学校のシミュレーション大会では国防委員直々に表彰されており、テレビでも放映されている。
何よりも、クラナフ自身が尊敬するマイケル・スレイヤー少将が気にしている。
クラナフの思いだせる限りで、スレイヤー少将が褒める事などほとんどない。
ただの見習いであれば雑用をさせて、さっさと追い出せば良い話。
だが、ただの見習いだと無視できない理由がそこにあった。
ここは惑星カプチェランカ。
最前線の戦場であり、その場には猫の手すら必要としているのだから。
+ + +
指令室を出て、歩けば狭い廊下の外にブリザードの吹き荒れる景色が見えた。
断熱の関係から最小限に備え付けられた窓に、雪と氷が張りついている。
厚い雲に覆われた世界は常に薄暗い。
そんな環境下において、目を細めれば、外で歩哨に立つ兵士の姿があった。
フルフェイスの完全装備で身を固めた兵士は、ともすれば中世の騎士のようだ。
この後の予定を、アレスは思い返す。
カプチェランカについたのが午後。
クラナフ大佐への挨拶が済み、正式な任務自体は明日以降だ。
予定としては小隊員との顔合わせがあるはずであるが、顔合わせの場所が伝えられただけで、出迎えは一切ない。
外を見ても時間が判断
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