第二十二話 〜邂逅 -Numbers.【暁 Ver】
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回避ではなく、左腕でガードしたのだ。二人を抱えていたことなど彼女にとっては言い訳にもならなかった。
油断していたのだ。コンクリートの破片など石ころと変わらない。そう判断した。その結果が左腕の損傷だった。ドクターから聞いた時は話半分ではあったが、認めざるを得ない結果がここにある。二人に話を聞いてみると、私達と戦うのはつまらないと言ったらしい。彼女は決意する。ならば──── 嫌でも戦いたくなるようにさせてやろう、と。
──── 実に楽しみだ。
『逃げられたね』
「……頭をねらえばよかった」
『どうする、追うかい?』
「……なんで?」
ボブに問われたアスナは本当に、心底わからないとでも言うように首を傾げた。アスナにとっては、そこにいるのを偶然見かけたから、投げた。ただ、その程度の認識であった。
『……それもそうだね。では、皆と合流しよう』
ヴィータ副隊長が悔しげにアスファルトを蹴りつける。結果だけを先に言えば、召喚士の少女と融合騎に逃げられた。何者かの介入によって。それは、あっという間だった。理屈はさっぱりわからないが、あたしとそう変わらないであろう年頃の少女が突然現れた。そう──── 突然だ。
その少女は瞬く間に、エリオからレリックのケースを奪うと、召喚士の少女を抱きかかえ、アスファルトの中へと消えていった。まるで、水に潜るように。物理的に拘束されていた融合騎も気がつけば、拘束具だけを残し姿を消していた。逃げるタイミングを伺っていたらしい。
「あぁ、召喚士一味に逃げられたのは、完全にあたしの失策だ。フォワード連中に責任はねぇ……だけど、レリックは無事だ。あぁ、ティアナが悪知恵を働かせてくれた御陰でな」
失敬な、策と言って欲しい。そんな感情が表情に出ていたのか、状況を報告していたヴィータ副隊長が、あたしを見ながら苦笑いを浮かべ、気にするなとばかりに手をひらひらと振った。
策とは言ったが、実のところたいしたことはしていない。ケースからレリックを取り出し、ケースの中にちょっとした『意趣返し』を入れ、キャロが最封印。取り出したレリックは、あたしの『幻術』を被せた上でキャロの帽子の中へ隠した。
帽子を取られてしまうと、頭の上に花が咲いているという正しくアスナ状態で怪しさ大爆発だが、戦闘中に敵と直接戦闘を行う機会が少ないキャロの帽子の中は、隠し場所としてはうってつけだった。
さて、あたしのメッセージは気に入ってくれるかしらね。身元不明の少女から始まったこの一連の事件。あたしの推論と感が告げていた。間違っていたとしても意味のわからない紙切れが一枚入っているだけだ。ねぇ?──── ジェイル・スカリエ
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