二幕 エルの妹
3幕
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目を見た彼女だから、似た境遇にあるかもしれないフェイに何かしてあげたいという気持ちが生じたのだろう。
フェイは戸惑いらしきものを浮かべていたが、やがてチョコレート菓子を恐々と受け取った。フェイは菓子の包装をぺりぺりと剥ぎ、チョコレートに小さく齧りついた。
「――アリガト、エリーゼ」
「! はい! どういたしまして!」
エリーゼは満面の笑みを浮かべた。フェイは俯きがちになり、無言でチョコレートをかりかりかり、と食べ進めた。前髪の隙間から覗く白い頬はほんのり色づいていた。
「ローエンとアルヴィンもどうですか?」『おいしい物はみんなで食べたいよね』
「よろしいのですか?」
「ほんじゃ遠慮なくー。今度お礼に新しくオープンしたカフェ連れてってやるよ」
ローエンとアルヴィンは菓子を一種ずつエリーゼの両手から取った。ローエンは菓子の包装を剥くと、菓子を二分割して、持ち手付きのほうをフェイに差し出した。
「――くれ、る?」
「おいしい物はみんなで、ですよ」
フェイはおずおずと手を伸ばし、幾度が躊躇いを重ねたが、ローエンから分けられた菓子を手に取った。
チョコレートが途中でも、フェイは構わずその菓子に齧りついた。
ぽりぽり。ウサギのようだ。
「おいしい」
おいしいからというよりは、もっと別の次元にある理由でフェイが驚いているように、ローエンには感じられた。
すると、唐突にフェイが菓子を窓枠に置いて、座席を立った。
「フェイ?」『どしたのー』
フェイは揺れなど物ともせず、前方のドアから車両を出て行った。
ローエンたちも、途中の座席のルドガーたちも、ぽかんと白い後ろ姿を見送るしかなかった。
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