二幕 エルの妹
3幕
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ルドガーやジュードたちと席が離れたローエンだが、同席のエリーゼとアルヴィン、それにフェイと歓談に興じていた。
もっともフェイは自発的にしゃべらないので、ローエンたちが話しかけてフェイの返事を聞き、また質問、というやりとりをくり返していた。
「エリーゼ。アルヴィン。ローエン。――フェイ、ちゃんと覚えてる」
何の話題だったか。フェイがこちら側の名を覚えているかという話になった。一人一人を指さし確認するフェイは幼児を思わせた。
「じゃーあっちは?」
「ジュード、レイア、ルドガー……」
ふいにフェイの指が停まった。ためらいにためらいを重ねて、小さな声が最後の名を呼んだ。
「エル」
それっきりフェイは俯いた。膝の上では固く両手が握り合わされている。隣のエリーゼがフェイの二の腕を撫でる。
「どうしました? 気分、悪くなったんですか?」『辛そうだよー』
「……思い出してた。わたしの姉さん」
「フェイさんにはお姉さんがいらっしゃるのですか」
「いた。もう、会えないけど」
何故会えないのか。それを追求しない程度には、ローエンは心得ていた。アルヴィンも、エリーゼも。
「じゃあフェイはご両親とお姉さんと4人で暮らしてたんですか?」
「ううん。二人とわたし」
妙な数え方にエリーゼが首を傾げる。
「母さんはコドモの頃に死んじゃった。あの家に住んでたのは父さんと姉さん。わたしは置いてもらってただけだった」
するすると出てきた自己を否定する言葉に、さすがローエンたちも息を呑まされた。
フェイ以外に気まずい沈黙が訪れる。
「エルを見てると、姉さん、思い出す。今までどんな女の子見ても、こんなことなかったのに」
「ひょっとしたら、エルさんはフェイさんのお姉さんに似てるのかもしれませんね」
前髪の隙間から覗いた、アルビノラビットに似た赤眼が、ぱちくりした。
「エルが、姉さんと」
フェイは向こう側の座席をぼうっと見やった。
「――そう、かも」
当のエルはルドガーの膝枕とルルたんぽでぐっすりお休み中である。
こちらの視線に気づいたルドガーが、苦笑して人差し指を口に当てた。ローエンは笑って頷き、アルヴィンは肩を竦めて返事に替えた。
そんな中、唐突にエリーゼが座席を立った。エリーゼは座席を抜けて通路を走っていった。
何事かとローエンとアルヴィンは顔を見合わせ、待っていると、戻って来たエリーゼは手に数種の菓子を持っていた。
エリーゼはその内、チョコレートをずい、とフェイに差し出した。
「くれるの?」
『エリーゼはー、フェイと友達になりたいんだってー』
得心した。エリーゼのこれは精一杯のエール。家族のことで辛い
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