TURN107 母と娘その四
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「お母さん、今時間あるの?」
「時間?」
「うん、時間あるの?」
「捕虜よ」
それでだとだ、スカーレットは今の自分の立場から話した。
「それならね」
「じゃあ肉じゃが作って」
こう母に言ったのである。
「そうしてくれる?」
「肉じゃが?」
「お母さんの作ってくれた肉じゃが凄く美味しいから」
澄んだ目で母を見て頼む。
「そうしてくれる?」
「私は」
「お母さんは?」
「貴女にお料理は作られないわ」
出来ないというのだ。
「もうね」
「どうしてなの?」
「共有主義では皆が同じものを食べるのよ」
そうするかだというのだ。
「三食もおやつもね」
「どの食事も?」
「そうよ、料理を作る人が給食を作って」
スカーレットは共有主義の食事のあり方も話す。
「栄養もしっかりしているものを食べるのよ」
「じゃあ肉じゃがは?」
「家では普通の人は作らないの」
絶対にだというのだ。
「だからね」
「お母さん真希にもう肉じゃが作ってくれないの?」
「御免なさいね」
スカーレットは申し訳なさそうな顔も見せる、だが。
東郷はその顔を見逃さなかった、それでだった。
真希に顔を向けてそして言ったのだった。
「じゃあお父さんが作るか」
「お父さんが?」
「ああ、真希の肉じゃがを作ろう」
スカーレットを前にして言う。
「そうしよう」
「じゃあお父さん御願い」
真希は父の言葉に笑顔で応えた。
「肉じゃが作ってね」
「今から作るからな」
実際に席を立とうとする、だが。
ここでだ、スカーレットは夫に対してこう言ったのである。
「待って」
「おや、どうかしたのかい?」
「肉じゃがは私が作るわ」
感情を出し強い声で出した言葉だ。
「そうするわ」
「おや、作らないんじゃないのかい?」
「貴方に作らせる位ならね」
それならというのだ。
「私が作るわ」
「そうするというんだな」
「真希の御飯は私が作るものだったわね」
そうだというのだ。
「それが私達の決まりだったわね」
「それが家の決まりだったな」
「そうよ、貴方の肉じゃが、いえお料理はどれもなっていないわ」
スカーレットから見ればだ、彼女は料理についても天才でありまさにシェフ顔負けの腕前を誇っているのだ。
その彼女がだ、こう言ったのである。
「随分ましになったかも知れないけれど」
「では君が作るか」
「今からそうするわ」
その赤い軍服に白いエプロンを着けての言葉だ。
「待っていてね」
「うん、それじゃあね」
真希は笑顔でスカーレットに応えた、そうしてだった。
スカーレットは部屋のキッチンで見事な動きで包丁を動かし鍋にその切ったものを入れていって作っていく。そして。
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