第二十一話 〜休日と嫌な予感 後編【暁 Ver】
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魔導師って」
初めて耳にする言葉だったのか、キャロは特定の誰かに問いかけるわけでもなく疑問を口にする。その疑問に答えたのは、スバルだった。
「えぇとね。人間に対して手術のような外科的な処置や……魔法薬を使った投与処置で、通常よりも何倍も魔力を強化した魔導師だね。倫理的な問題も多いし、成功率も決して高くないから、ほぼ廃れちゃってる技術だけど」
「コストが合わないわよ。一人の人造魔導師を生み出すのに莫大な費用が掛かるって聞いたわ。よっぽどここが」
ティアナはそう言いながら、右手の人差し指をこめかみへ持っていくと、とんとんと叩く。
「……いっちゃってる連中じゃないとね」
より一層表情を引き締めたスバルとキャロではあったが、その中で唯一人。暗く表情を沈めていた少年がいた。その少年が──── エリオ・モンディアルと言う名の少年が、人造魔導師技術により生を受けたことをこの場にいる人間は、まだ誰も知らない。
隣を併走していたキャロは、彼の表情の変化に逸早く気付いていた。だが、彼女は何も聞けなかった。彼の表情は鏡に映った少し前の自分の顔と、よく似ていたから。それでも、キャロは意を決して口を開きかけた時────
「……さっきからエリオの視線が、おしりに突き刺さる」
「刺さってませんっ。下を……向いていましたから」
──── 前を向いて歩きなさい、エリオ
再び俯いてしまった顔を弾かれたように上げる。エリオは少なからず困惑していた。普段の間延びしたような口調とは明らかに違う鋼のような声。エリオは自分のすぐ前を走っているアスナへ、恐る恐る声をかけた。アスナはゴーグルに半分覆われた顔を電気仕掛けの人形にようにエリオへと向けると声を返す。
「……ちゃんと前をむいてないと、あぶないな?」
戻った。彼がいつも聞き慣れている、少々間延びした蚊の鳴くような声だ。
「あんたは前しか見てないから躓いて転ぶんでしょうが。何もなところで転ぶのなんか、フェイトさんとあんたくらいよ。それにしてもよかったじゃない、スバル? ギンガさんもあたし達に合流してくれるみたいだし」
「うん、そうだね。久しぶりだ」
「……かえっていい?」
「いいわけないでしょ」
「え? ……アスナさんはスバルさんのお姉さんが苦手なんですか?」
エリオの尤もな疑問にスバルが困ったように眉を寄せながら答える。
「えっと……会えばわかるよ」
「あの人は、アレさえなきゃね……とてもいい人なんだけど」
エリオとキャロの頭上に、クエスチョンマークが踊り出す。その時──── 彼女達が疾走していた通路の脇道から爆発音が轟いた。ティアナ達は足を止めると慣れた動作でそれぞれのデバイスを
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