二幕 エルの妹
2幕
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気づくとエルは霧が立ち込める場所に立っていた。
(あれ、ルドガーは? ジュードたちは?)
ふいに霧がざあっと晴れた。
目の前に広がる大きな湖。湖に半分突き出して建つデザインハウス。
(ココ、エルのウチだ)
ふと、家と反対側の断崖のそばでうろうろしている子供が目に入った。
(あのこ、だ。エルの妹の )
エルは自分が何故家に帰っているのか、何故死んだはずの妹がいるかを考えず、妹に歩み寄って、その時と全く同じに声をかけた。
“どうしたの? なにをこまってるの? おねえちゃんに言ってごらん”
すると妹は困り果てた顔でエルをふり仰いだ。
髪はエルより薄めのミルクティー色、瞳の色は薄紫。怯えた小動物のように眦を下げて――そうだ。妹はこんな面差しをしていた。
“お花をとりたいの。でも、 じゃ、とどかない”
妹が指さしたのは、水際に咲いたいっぱいのシロツメクサ。確かに妹の体では身を乗り出してもわずかに届かない位置だ。
“パパにあげようと思ったのに”
妹が泣きそうになっている。ならば姉であるエルがすべき行動は決まっている。
“泣かないの。おねえちゃんがとってきてあげるから”
“ほんと?”
“まっかせなさい”
エルは妹より体も少しばかり大きかったし、家の近くの森で遊び回って足腰が強い自信があった。
ひょい。まずは陸地から水際の小さな足場に乗り移る。
崖のくぼみに掴まって、全身を大きく傾けてシロツメクサに手を伸ばす。
ボコッ
“っおねえちゃあん!!”
ぐわん。エルの視界が暗く回転した。
次にちゃんとした足場に立っていたのは、家の中だった。
リビングのドアの前。廊下は暗く、光源はリビングから漏れる灯りだけ。
エルは足音を殺してドアの隙間から室内を覗いた。
バチンッ!!
平手打ちの音。エルは縮み上がって一歩下がったが、勇気を出してまたドアに近づいた。
(パパと、あのこ。パパ、なに、してるの。なんで、あのこのほっぺたハレて、血が出てるの)
“ のせい は死ぬところだっ お前 なんて かせたせいで とんでもな とを した ”
“……ごめんなさい”
妹の声は明瞭に聴こえるが、父の言葉はとぎれとぎれにしか聞き取れない。
バチンッ!! ――2度目の平手打ちの音。
“ごめんなさい”
“ を し だけで らず、 さえ 奪う か”
“ごめんなさい。パパ。ごめんなさい”
“ を して産まれ 。エル 今度は 。許さない、許さない”
“ごめん
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