暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
最後のチュートリアル
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りする者はいない。全員が、まだ伝えられた言葉を理解できないか、あるいは理解を拒んでいる。
だが、レンだけは瞬間的に全てを理解していた。
ナーヴギア、その構造は、前世代の据え置き型マシンとは根本的に異なる。
平面のモニタ装置と、手で握るコントローラという二つのマンマシン・インタフェースを必ず要求とした旧ハードに対して、ナーヴギアのインタフェースは一つだけだ。頭から顔までをすっぽりと覆う、流線型のヘッドギア。
その内側には無数の信号素子が埋め込まれ、それらが発生させる多重電界によってナーヴギアはユーザーの脳そのものと直接接続する。ユーザーは、己の目や耳ではなく、脳の視覚野や聴覚野にダイレクトに与えられる情報を見、聞くのだ。それだけではない。触覚や味覚、嗅覚を加えた、いわゆる五感の全てにナーヴギアはアクセスできる。
これだけ聞くと、まさに最先端テクノロジーと言えるが、レンはそれと全く同じ構造を持った物を知っている。
それは────電子レンジ。
充分な出力さえあれば、ナーヴギアは脳細胞中の水分を高速振動させ、摩擦熱によって脳を蒸し焼きにすることが可能だ。
そしてナーヴギアには、その大それたことを成し遂げてしまう大容量のバッテリが内蔵している。
─だが、瞬間でもあったら─
そんなレンの心の声が聞こえたかのように、上空からの茅場のアナウンスが再開された。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み──以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制徐装を試みた例が少なからずあり、その結果』
いんいんと響く金属製の声は、そこで一呼吸入れ。
『──残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
どこかでひとつだけ細い悲鳴が上がった。
しかし周囲のプレイヤーの大多数は、信じられない、あるいは信じないというかのように、ぽかんと放心したり、薄い笑いを浮かべたままだった。
──二百十三人が死んだ?冗談だろ?──
広場にいる人々のほとんどの人はそう思っているに違いない。
「信じねぇ………信じねぇぞオレは」
不意に嗄れた声が聞こえた。レンが声のした方向を見ると、そこにいたのは石畳に座り込んでいる先ほどの悪趣味バンダナ男だった。
「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねぇことぐだぐだ言ってねぇで、とっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに付き合ってられるほどヒマじ
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