〜出発〜
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瞥して視線を変えれば、アレスは扉に手をかけた。
「おっと、忘れるところだった」
壁にのフックに吊るしていたベレー帽。
自由惑星同盟軍の制帽であるそれを慣れないように頭にのせる。
前世のイメージからかベレー帽にはいまだに慣れる事はない。
そもそも帽子をかぶると言う習慣がないのだ。
制服ばかりは帝国の方がいい。
そう苦笑して、アレスは頭にのせたベレー帽を深くかぶりなおした。
+ + +
「長い上に遠いな。俺の第一歩がこんなところとは、ついていない」
「冷えますからどうぞコートを羽織ってください、ラインハルト様」
「これくらいどうってことはない。身体よりも心の問題だ、キルヒアイス」
艦上から外に出て、硬質な音を床に響かせて歩く影があった。
金髪と赤髪――まだ幼年学校を卒業したばかりの十五歳の若者だ。
絹のような細い金色の髪と彫像のように整った顔立ち。
顔立ちが若いために一見すれば女性とも見間違えそうな金髪の若者――ラインハルト・フォン・ミューゼルと同じく幼いながらも優しげな顔立ちをした少年、ジークフリート・キルヒアイスの二人だ。
苦々しげな表情を隠さないラインハルトに対して、キルヒアイスは彼を落ち着かせようと言葉をかける。そんな姿が母親に心配される子供に思い、ラインハルトは一度は断ったコートを受け取って、身体に羽織った。
「先ほども申しましたが、単に悪いというだけの話ではないでしょう」
「君の悪いことに良いところを見つけるのは美点だと思うが、そこに良いところを探している時点で、それが悪いことであるというのはかえようがない事実だぞ」
「それはそうですけれど」
「まあ、愚痴が過ぎた、許せ。しかし……」
時折現れる窓から、外を吹き荒れるブリザードの嵐に、ラインハルトは眉をひそめた。
先ほどから轟々と鳴り響く風の音は、強化金属で囲われた基地施設ですらも吹き飛ばされそうな錯覚に陥る。空調が入っているはずの施設内ですらコートが必要となれば、外はどれほどの気温になるのか。
我慢できないわけではないが、進んで我慢したくなるほどの性癖はラインハルトにはなかった。ましてや任地が、戦略的に無駄であると思っているラインハルトにとっては、なおさらだ。
「敵地にまで進出して資源採集をやらねばならないほどに、帝国の財政は逼迫してるのか」
「ラインハルト様。お声が大きいです」
「心配するな、キルヒアイス。誰も聞いてはいない。他のものは俺達をおいて、さっさと出ていったじゃないか」
周囲の関わりたくないという態度は、あからさまなものであった。
皇帝の寵妃の弟という立場を実感すれば、ますます苦いものがある。
誰が進んでそんな立場になりたいと思うのか。
「では、ライ
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