〜出発〜
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ているのは、良質な鉱物資源が存在するためだ。
互いが互いに鉱物プラントの周囲に基地を置き、資源の採集と相手のプラントの破壊を続けている。
「まったく無駄な基地だ」
と、アレスは呟く。
資源問題は過去から続いているとはいえ、今更一惑星程度の鉱物が必要なわけでもない。
ここでしか取れない鉱物資源が存在するわけでもない。
先のワイドボーンの言葉でいう費用対効果ということを考えれば、一つの惑星に固執して犠牲を払うのであれば、早々に撤退して別の惑星の開発にその金を使った方が遥かに利益は大きい。
しかし、撤退案がでないのは同盟の国内問題によるところだろう。
イゼンローン回廊とフェザーン回廊を国境と考えれば、惑星カプチェランカは同盟側の領地であり、自領に存在する資源地であるという思いがある。そこを帝国に奪われたと聞けば、単純に腹立たしくも思うであろうし、次は別の領土を帝国に奪われるのではないかという危機感を感じてしまうのだろう。
かといって、艦隊を繰り出してしまえば、大規模な大戦を誘発することになり、それは同盟も帝国も望んではない。一惑星の奪取だけを考えるならば、艦隊戦はあまりにも費用がかかり過ぎる。こうして、政治家の議題にカプチェランカ撤退案がのぼることもなく、ただただ小規模な陸上戦を続けることになる。
現場とすれば無駄な戦いを強いられているようなものだ。ワイドボーンは偏見と言ったが、現場サイドとしては愚痴りたくなる気持ちもわかる。
もっとも、それが向けられるのは今回はアレスということになるのだが。
『まもなく惑星カプチェランカ外周部に到着します。総員はシャトルに向かい、離艦の準備を整えてください』
機械的な音声が鳴り響き、到着を知らせる合図となる。
惑星カプチェランカ基地に宇宙港などという有用な施設は存在していない。
そんなものを出せば、基地の場所が一目瞭然であるし、何より外部からの攻撃によりすぐに破壊されてしまうだろう。カプチェランカ周辺に付けば、そこから小型のシャトルに分乗して、基地へと向かうことになる。
荷物といっても、旅行鞄で二つほどを手にすれば、アレスは窓から外を眺めた。
遥かかなたで小さく光る青い惑星がある。
前世では宇宙旅行など夢物語であり、それこそ物語の中の世界でしか、見る事ができなかった。
それが現実となって、存在している。
考えていたような感動がないことが不思議であった。
アレスにとっては宇宙旅行というものは初めてであるはずなのに、それが当然という思いがあるのは、テレビで宇宙の様子を当たり前に映す現実のためか。
あるいは物見遊山ではなく、戦場に向かうのだと言う意識のためか。
どちらにしても、遥か外に映る惑星は儚く、そして小さい。
一
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