〜出発〜
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っているわけではない。
慣れない場所で、コピーを取る事により先輩の仕事の内容を知る。
定例的な文書を作成することによって、仕事の流れと文書の作成方法を学び、雑務や事務をする事により、人間関係を築く。
そうして一年も経って中尉となれば、一人前として仕事ができるようになる。
そんなシステムは、しかし、アレスにとっては無駄でしかない。
基本的な仕事の進め方など前世で理解している。
いま必要としているのはそんな基本的な事項ではなく、軍人という特殊な仕事の内容についてだった。それならばデスクで座って事務を進めるよりも、前線にいた方が遥かに学ぶことができる。
残念なことに時間は有限であって、一年という期間はあまりにも貴重だ。
「なぜ見てきたようにいえる」
「間違えてはいないでしょう?」
「概ね正解だ。腹立たしい事にな」
吐き捨てるようにワイドボーンは呟いた。
「ふん。まあ、いい。貴様に今更見習いが必要だとは思ってはいない。それよりもカプチェランカ基地の件だが、基地司令のクラナフ大佐はスレイヤー少将の部下だった方だ。公正ではあるが、少々士官学校出の人間には偏見を持っていると聞く」
「偏見ですか」
「現場第一主義というらしい」
「考え方自体は間違えてはいませんよ」
「無尽蔵に金が湧いてくるのならばな。現場は自分の命を考えればいいが、こちらはその費用対効果まで考えなければならないわけだ」
「費用対効果でいうならば、戦争などしなければいいのでしょう」
「それをいうな。話が終わってしまう」
アレスの言葉に、ワイドボーンが苦笑する。
「ま、あちらの考えがどうあれど士官学校出の若造が好かれることはない。安心しろ――ところで、一つ聞きたいが」
「何です?」
「全く意味のないところで、その通りですというのは何とかならんのか。貴様が変わらぬ毒舌を言った後で、真顔でその通りですと言われれば、何か気持ち悪いものがある」
「そりゃ、録画ですから。相手の反応に応じてパターンを変化できるわけがないでしょう?」
「ああ。それはそうだな。納得したところで、もう一つ質問を良いか?」
「ええ」
そう言いながら、アレスはそっと両耳に指を入れた。
「お前は人を馬鹿にしているだろう?」
+ + +
ワイドボーンの説教が終わって、息を吐けば、アレスは手にしていた本に目を落とした。
惑星カプチェランカ。
イゼルローン回廊付近に存在する惑星であり、公転周期が六百六十八日。
そのうち六百日以上に渡ってブリザードが吹き荒れる極寒の大地。
そのため航空機からの陸上支援はほぼ不可能であり、陸上戦闘がメインとなる。
こんな最低な環境に自由惑星同盟軍と帝国軍が双方集まって、戦闘を繰り広げ
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