第一物語・後半-日来独立編-
第五十八章 解放《3》
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の長であるセーランの声を聞く。視線は解放場内にいる二人に向けられ、鋭い目付きで威嚇している。
冷たい雰囲気を漂わせ、ただ口を動かした。
「それにしても、最後の最後まで面倒を見させられる。少しは一地域を治める一族だという自覚はあるのか、委伊達・奏鳴?」
「く、言いたいことをべらべらと。キサマも少しは慎みを覚えたらどうだ」
「生憎こういう性格なのでね」
二人の会話には棘が感じられた。
触れれば痛い、そんなようだ。
棘は勿論、奏鳴の前にいるセーランにも向けられた。
「まさか告白をするためにここまで来たとは、愚かを通り越して関心を覚える。肝心の返事は貰っていないようだが」
「テメエが邪魔して来たからだろ。何しに来やがった。まあ、大方予想は付くけどな」
「ならば長々と説明する必要も無いな」
針積めた雰囲気が周囲を覆い、それによって皆は黙り込んだ。だからか、大気が流れる音が聞こえる。
艦と船の間を通り抜ける風に、立つ央信の長い髪を揺らす。
揺れる髪を気にせず、言葉の続きを口にし。
「大人しく解放されていろ。こちらの要求はただそれだけだ」
「勝手なこと言ってくれるじゃねえか」
「日来長、お前はそいつを庇うというのか? そいつは黄森の社交院の者を殺した殺人者だぞ。同胞を殺した罪は支払ってもらわねば困る」
「何が同胞だ。黄森で色々とやってるらしいが、邪魔になる者を奏鳴に殺させるように仕向けたんじゃねえのか」
「馬鹿馬鹿しい。なんの話しをしているのかさっぱり分からんな」
余裕な態度のまま、セーランの言葉を否定した。
まだ決まったわけではないが、奏鳴に邪魔者を排除させるために密かに会議を開いたのではないのか。国力強化に関する会議だったと噂になっているが、もし会議自体が罠だとしたならば。
真実は分からない。が、そう考えることも出来る。
万が一、ただ単に暴走しただけとも考えることも出来る。
どちらが正しいのか、今は分からない。
それでもセーランは信じている。
「奏鳴に罪はねえよ。真実なんて分からねえけど、俺は、俺自身の考えで! こいつの無実を信じる!」
叫び、はっきりと言う
この言葉に奏鳴は震えた。
真っ直ぐ、自分の思ったことを言ったセーランを見て。その姿はまるで、今まで自分のために救う道を差し伸べていた仲間達と似ていた。
そしてその姿は、初めてセーランと会った日の言葉通りだった。
救いに来てくれたのだ。
微かに胸を打つこの感覚はなんだ。胸を締め付け、なのに興奮に近いこの感覚は。
分からない。
幣・セーラン。
お前は、本当に私のことを……。
分からないが、前に立つセーランを見詰めて思う。
彼は本当に救おうとしているのだと。こんな自分を、突き放すような言葉を言った自分
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