第一物語・後半-日来独立編-
第五十八章 解放《3》
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「どんなに辛く悲しい時でも、これからは何時でも側に俺がいる。甘えたり頼ったりしてこい。期待に応えられるだろうからさ」
返事は返ってこなかった。
ならば言おう。
ただ一人、戦ってきた彼女に。
もう肩の荷を下ろしてもいいのだと、そう告げよう。
お前には俺が必要だと、解らせよう。
大切な人を失うのは誰であっても嫌なものだ。だが生きていく上でそれは当然のようにあり、越えていかなければならない。
すう、と息を吸い。
「俺はお前と一緒に――」
続く言葉が聞こえなかった。
急に途切れたのだ。
何故かは解放場にいた時点で、二人は解っていた。
解放の速度を早められ、それによる身体の流魔分解が進み、驚き、反射的に喉に言葉が詰まり続かなかった。
上から風が巻き起こるように、しかし二人に風の影響はなく、青い光を放つ流魔だけが上へと乱れながら行った。
身体の所々、流魔分解されている箇所があり、それはただの人族であるセーランの方が多かった。
身体から漏れ出す光。
光に全身を包まれたら最後、解放の時を待つしかない。
だが、これだけではなかった。
ある者が一人。
「茶番はそこまでだ」
解放場を背負う駆翔天とは別の戦闘艦の甲板上に立つ、一人の少女。
黒髪は微かに不気味な紫色の光沢を放ち、制服の左胸には桜と月が合わさった校章が付けてある。
制服を着ていることから学勢であることは確かで、誰かはすぐに分かった。
だから今。この時。全ての戦闘は息を止め、誰もが彼女に目を奪われた。
解放場内には外界の声が聞こえない筈なのだが、彼女の声だけは聞こえた。解放場内に通信機が設けられているため、そこから彼女の声が出ているのだ。
証明するように少女の目の前には、一つの映画面|《モニター》が表示されている。
「お出ましか。神州瑞穂の主戦力である奥州四圏の更に主戦力、黄森の天桜学勢院覇王会会長――」
苦笑いの奏鳴は少女を見て言う。
圧倒された、押され気味の震えた声で。
「織田瓜・央信……!」
それが、神州瑞穂の頂点に立つ者の名だ。
●
不適な笑みを漏ら央信。
日来の辰ノ大花の覇王会会長を交互に見て、何を思ったのか鼻で笑う。
短い笑いの後には言葉が続いた。
「最後の悪あがきと言ったところか。ご苦労なことだな」
「お前が天桜学勢院の長か。こうして顔を合わすのは初めてだな」
「日来長、か。そっちはそっちで随分なことをしてくれたな。お陰でステルス戦闘艦である黒明二艦を何もない向こう側へと置いてきてしまった」
「ドラゴン級のもあったろ」
「あの程度の戦闘艦など幾つでも造れる。問題なのは性能の高い戦闘艦が意味の無いところにあるということだ」
央信は自身が表示した映画面から、日来
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ