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神葬世界×ゴスペル・デイ
第一物語・後半-日来独立編-
第五十八章 解放《3》
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み掛け、こうセーランは言った。
「これからは幸せを得ることで償おうぜ。あいつらが得ることの出来無かった幸せを、責任持ってお前が得るんだ」
「それでは、結局怨まれ続けるのだな」
「命を奪ったこと自体は事実だからな。まあ、心配すんな。俺がいる。お前の横には俺がいる。恐くなって、一人じゃ無理だと思ったら頼っていいんだぜ?」
 涙を拭う手を、何かを思うように奏鳴は見詰めた。
 人の血肉を裂いた手が目に映る。
 肌色の手か深紅に染まった過去が脳裏に映し出され、強く目をつぶった。
 受け入れなくてはいけない事実から目を逸らし、辛いがために逃げ出したのだ。
 震える身体。細身のその身体が、彼女自身にしか解らぬ重圧から身体を丸めている。
 震えながらもセーランに向かい言う。
「知っている筈だ。この身は穢れている」
「ああ、知ってる」
「幾人もの血でこの身を汚し、血肉を裂いた手に、肉塊を踏み潰した足。心さえも穢れてしまった」
「平気だ。それでも俺は嫌いになったりしない」
「分かってないな、お前は」
「何がだ?」
 セーランは問う。
 理解出来ていないものは何かと、問うように。
 数歩。奏鳴はセーランに近寄る。
「私の気持ちをお前は理解出来るのだろうが、人を裂く感覚は分からないだろ?」
 息を飲んだ。
 セーランの方がだ。
 はっと驚いたように目を開いて、下顎が自然と落ちた。
 無理に、心地無い笑みをつくりながら奏鳴は言う。
「記憶に、身体に染み付いているんだ。生きた者の肉を裂く感覚が。人に触れただけで思い出してしまう。もうあんなのは御免だ」
 無言のまま、聞いていたセーラン。
 同情したような顔付きで奏鳴を見詰め、ただそれだけだった。他の行動は無かった。
 口を出せるようなものではなかったから。
 セーランには生きた人を、人以外のものも手で裂いた経験など無い。
 本意ではなくとも、奏鳴は二度経験している。
 安易な言葉が逆に彼女を苦しめる。それもあってか、セーランの口は動かなかった。
「痛みから大抵の者は泣いていたよ。痛かった程度のものではなかった筈だ。皮膚に爪を突き刺して、力一杯に引き裂いたんだ。皮が捲れて筋肉が見えた。真っ赤に染まっている筋肉に更に爪を刺して……爪を刺して、引き千切った」
 恐怖によって植え付けられた当時の記憶が、まるで録画を見ているように思い出される。
 家族の時も、黄森の者達の時のも。
 誰も止められなかった、暴走した人殺しの自分を思い出す。
「身体が勝手に動いたんだ。抑え込もうとしたが、まるで操られてるように身体が言うことを聞かなかった。目もほじくり返すように千切ったし、裂いた腹から内臓なんかも引っ張り出した。
 家族の時なんかは、口で家族の顔を噛み千切った。血の味がした。口一杯
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