XII
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「気にし過ぎだろうに」
更に言うなら世界的に有名な裏切り者であるアイツの名を想起させる。
悪魔や異教徒を退けた無敵の男を銀貨30枚で殺した男、Judas Iscariot――ユダだな。
今でこそキリストの死は予定調和でそこから復活して奇蹟を――ってのが常識だ。
しかしどうだ、もしもジューダスが裏切らねばどうなっていた?
もしかしたら歴史が――世界が変わっていたかもしれない。
俺が生きている世界だって存在していなかった……そう思うと敬意を抱かざるを得ない。
旧秩序を破壊した偉大な男だと。
あくまで個人の感想だし、こんな考え方する方がおかしいのだろうが。
兎も角、俺はジューダスに対しての嫌悪はない。
名前を嫌う理由は、
「前に名前ネタでいじられたんよ。そっから嫌いになってなぁ」
「それが名前を好いてない理由か? 何とも子供っぽい……」
「まだ十七だもん。ガキで結構コケコッコーってなもんよ」
我ながらガキっぽいとは思う。
大層な理由があればよかったのだが、ホントにそれだけだ。
「だから名前を呼ぶのは割と勘弁」
「ふむ、嫌がるのを無理に呼ぶつもりはない。ちなみに君に親しい者は何と呼んでるんだ?」
「養父母は名前だったが、それ以外で名前を呼ぶ奴はあんまいねえな」
「山岸なども君を苗字で?」
「いや、アイツはあだ名で呼んでる。霧信だからキーくんってね」
俺のお袋がそう呼んでいたのを真似し始めたのが最初だったか。
子供っぽいあだ名で呼ぶ者は風花以外にはいないが……いや、一人居たな。
公子と出会う数時間前にに引っかけた女だ。
ホテルに行く途中で風花から電話があって、そこから漏れた声で……
まあ、もう二度と出会うこともないだろうし気にしなくてもいいだろう。
「き、キーくん?」
「ああ、キーくんだ」
風花に名を呼ばれると、何だかほっとするのだ。
アイツの雰囲気や声は――――心を落ち着けてくれる。
風花の両親が望む医者はともかく、心理療法士なんかに向いているかもしれない。
「――――」
言葉を失う美鶴、そこまで驚くことだろうか?
「ックク――そ、そうか。き、キーくんか。フフフ、可愛いじゃないか」
含み笑いを漏らしながらそんなことを言われても馬鹿にされているようにしか思えない。
確かに俺自身、キーくんなんて柄じゃないとは分かってるが……他人にどうこう言われるのは嫌だ。
「ふぅ……ならば私もキーくんと呼んでみようかな?」
「止めとけ。似合わないことこの上ない。他の連中に気が狂ったんじゃないかって思われるぜ」
「……中々に酷い言われようだな」
桐条美鶴が後輩をキーくんと呼ぶ、それは一体何のギャグだと言う
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