XII
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ていた。何と傲慢なことか……笑えるだろ?」
「笑って欲しいのか?」
「君にならば――いい」
妖しい色気を混ぜた流し目を送られる。
女慣れしていると思っていた俺でも、クラっとくる魅力。
変われば変わるものだ。
「笑わないさ。俺も随分を無様を晒したからな。で、それは他の連中には?」
「問われれば答えよう」
「ああ、膿を出し切ると?」
特に岳羽、彼女は不満が溜まっている。
だがそれをこちらから手を差し伸べて解消させるよりも、爆発させた方がいいと判断したのだ。
確かにすぐに伝えるのも一つの手ではあるが……まあ美鶴の判断を尊重しよう。
恐らくは岳羽に伝え難い事実でもあるのかもしれない。
「フッ……以心伝心だな」
「そいつは光栄だ。で、これで話は終わりか? だったら急いだ方がいいんじゃ……」
「問題ない。既に手配は済ませてある。何だ、私がいれば困るのか? 悲しいぞ」
「……変われば変わるもんだ。よう、どんな心境の変化があったんだよ」
冗談交じりの物言いがここまで様になっているのだ。
あのクソ真面目と噂の生徒会長様が、だ。
気になるのも仕方ないだろう?
「私の君への第一印象は軽薄、だが食わせ者、だった」
「軽薄ってかチャラいのは否定しないさ」
「そしてその第一印象のまま今日まで君を見ていたんだ。が、その認識が総て覆ったんだよ」
「それは何故?」
思い当たることがないでもないが……理由が分からない。
「君は間違いなく悪党だ。拉致監禁、拷問、言い訳のしようもなく悪だ。
しかし、成すべきことのために全霊を尽くす様は……善悪を超えて羨ましいとさえ思った。
覚悟――と呼ぶべきなのだろうか。それをまざまざと魅せつけられた。
こうまで苛烈に生きている人間、そうはいない。私も……私もそうでありたいと思ってしまったんだ」
見当違いな憧れ、か。
「どの道私――いや、桐条は咎人だ。犯した罪を消し去るために更に咎を重ねる。
だと言うのにどの面を下げて罪悪感などと言う贅沢なものを……唾棄すべき人間とはこのことだ。
私は決めたはずなのに、父のために影時間を消し去ると。であれば、私も君のようにあらねばならないと決意したんだ」
その結果がこの変貌か……何とも言えないが、どの道他人の決めたことに口出しはしまい。
自分の中で折り合いがついているのならばそれでいい。
「まあ、森山夏妃を拉致監禁するのは何とか許容出来たが……江古田教諭のアレはやりすぎだ。
八つ当たりにしか見えなかったので止めさせてもらった。そこは君も今ならば分かるだろう?」
「……ああ、不徳の致すところだ。冷静さを欠いていた」
感情の波濤に飲み込まれていたのは否定出来ない。
森山の拉致
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