XII
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を浮かべる美鶴、どうにも調子が狂う。
彼女の変化に俺が追いつけていないのだ。
「しかし見事な手際だったよ。医師を志していたのか?」
「違う。親の影響だよ。色々教えてもらったり、ガキの時分に親の書斎で色々読み漁っただけさ」
「そうか……よき両親だったのだな」
「ああ、俺には勿体ないくらいのな」
「私の両親も厳しいが素晴らしい人間だ。祖父は違ったがな」
ん? どこか引っ掛かりを覚える言葉だ。
「愚かな妄執に憑りつかれた馬鹿な男の話をしよう」
「お前……」
「君が勇気をくれた。非情になることへの勇気、そして責任を教えてくれた。そんな君にだからこそ話したい」
その顔はどこまでも真剣で――ならば、ちゃんと聞くのが礼儀だろう。
敬意を払うだけのものは魅せてもらったのだから。
「ことの始まりは我が祖父桐条鴻悦だ。祖父は桐条を本家南条に並ぶほどに発展させた天才的な経営センスの持ち主だった」
南条――ああ、そう言えば桐条と南条は同じものだったな。
鴻悦と言う名についても聞いたことがある。
政界にも影響力を及ぼす傑物だと。
「彼は富と名誉で自身満たしたが、老年期に入ってからは生きる目的を喪ってしまった」
「ありがちだな。燃え尽き症候群、バリバリやってた人間が陥り易い」
「ああ、だが祖父はそのまま燃え尽きて灰になるべきだったのだ」
祖父に対して随分と辛辣な物言いだ。
能力については尊敬しているが、人柄については……と言うことか?
「そんな折にシャドウと黄昏の羽根に出会い、今から十四年前に馬鹿な野望を抱いてしまった」
「ほう……」
「時を操る神器の建造、馬鹿だろう? 結果が十年前の爆発事故だ。知っているだろう?」
「まあ、な」
その日から記憶が始まっているのだ、知らないはずがない。
何とも奇妙な符号だと思うが……いや、今はそれはいい。
「それによりタルタロスやシャドウ、影時間などと言うものが生まれてしまった。
そして私は敬愛する父のために総てを元に戻そうと戦っている」
「ん、シャドウ?」
さっき鴻悦はシャドウと出会ったと……
「ああすまない。シャドウについてはそれ以前にも居たらしいが……」
「成る程。今のような形でシャドウが溢れだしたってわけか」
「そうだ。理解が早くて助かる。兎に角、これが真実だ。私はこれに負い目を抱いていた」
「だろうな」
「御見通しか……まあ、当然か。君は人をよく見ているからな」
「ならついでに当ててやろう。桐条の尻拭いに俺達を利用してる、そう思ってもいただろ」
「うむ。恥ずかしいことにな」
苦笑しながら肯定する美鶴を見るに、もう吹っ切れたらしい。
「それに加え、桐条の力を使うことにも躊躇いを持っ
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