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渦巻く滄海 紅き空 【上】
六十三 濃霧に沈む
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らうと思うか?――――ドス!」 
「はい」
再不斬の高らかな声。次の瞬間、水月の目の前には一人の少年の姿があった。
顔をほとんど覆い隠すその身形は再不斬とよく似ている。

水月の怪訝な顔を気にもせず、少年――ドスは何の前触れもなく、いきなり水の円球に右腕を突っ込んだ。
突如、水牢の壁を突き破って、眼前に迫った腕に水月は驚く。慌てて液化し、牢内の水に溶け込んだが、その瞬間。

物凄い振動と衝撃音が水月の全身を貫いた。




気絶し、【水化の術】が解けた水月。牢の中でぷかり浮かぶ少年の姿を見遣って、再不斬は【水牢の術】を解いた。途端、ザバリと水が滴下し、ドスの足下を濡らす。

再不斬を見ると、彼は橋の方角へ眼を向けていた。その視線の先に、ドスはナルトの姿を認める。ナルトの傍にイタチがいない事から察した彼は、内心安堵の息をついた。
(やれやれ…。ようやく御役御免ですか)

ドスは先ほどまで木々の上で待機していた。再不斬の声に応じてすぐさま降りて来た彼は、命じられるままに【響鳴穿】の音を奏でたのである。
水月の【水化の術】は自身の身体を自在に液化させる術。物理攻撃を無効化し、敵の目を錯乱させるなど様々な用途があるものの、避けられぬものもある。

その一つが、音。

人体の70%以上は、音を伝導する水分で構成されている。ましてや全身を水と化す事が可能な水月は一溜りもない。ドスの【響鳴穿】による音の振動は彼をあえなく気絶させた。
つまり水月自身が耳と言っても過言ではないのだ。


気を失った水月を再不斬が肩に担ぎ上げるのを見ていたドスは、肩の荷が下りた気がして、少し警戒心を緩めた。直後、慌てて気を引き締める。

まだ此処は木ノ葉なのだ。すぐ傍に木ノ葉の上忍もいるのに、どうして気を許せようか。
この場から無事に立ち去るまで緊張の糸を切ってはいけないと己を奮い立たせる。

再不斬に指示を仰ぐ。目配せから意図を理解したドスは、次の行動に移るべく、頭上の者へ声を掛けた。







膠着状態に持ち込まれていたアスマと紅は、自分達を取り囲む数多の鏡が一瞬で消え去った事に目を見張った。
(術が解けた…!?なぜ、)

木ノ葉の増援が来たのかと内心期待する二人。しかしそれは結局、ぬか喜びに終わった。アスマと紅の目に飛び込んできたのは、対峙していた少年の他に、もう一つの影。
あの『霧隠れの鬼人』――桃地再不斬だった。

(最悪だ…ッ)
くそっとアスマが悪態を吐いた。ギリリと噛み締められた咥え煙草。
同じく顔を青褪めながらも紅が眼つきを険しくさせる。
多勢に無勢だが、最期まで闘う覚悟が双方には確固としてあった。身構える。

しかしながら、鬼人はただこちらをじっと見つめているばかりで動く
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