六十三 濃霧に沈む
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ながら彼女は里外にいる為、自来也が急ぎ探索に出る……波風ナルと共に」
「………ナル?」
見知った名が突然耳に入ったサスケが怪訝な声を上げた。訝しげな視線に促され、ナルトは話を続ける。
「波風ナルは今、自来也の弟子だ。ちなみに綱手はうちは事件には全く関与していない。ダンゾウと違ってな」
兄を苦しめた火影と、何も知らない火影。後者のほうがまだマシだ、という結論に達したサスケが意気込んで口を挟む。
「なら俺も…っ」
「サスケ。お前は里にいろ」
捜しに行く、と続く弟の言葉を、イタチは諌めた。不満げに見上げてくる弟へ微笑みかける。
「ダンゾウが火影に就任しないよう、出来るだけ引き延ばせ。俺の代わりに里を頼むぞ」
「…!―――ああ。わかったよ、兄さん」
自分を頼りにしてくれた兄に歓喜し、サスケは強く頷いた。
今まで憎んでいた反動か、幼き頃同様にイタチを慕うサスケを、ナルトが微笑ましく、だが少し羨ましそうに眺めている事など彼は気づかなかった。
とにかく一段落ついたと解釈し、すぐさまイタチに視線を投げる。ナルトの鋭い視線を受けたイタチもまた、静かに目を眇めた。
『暁の任務は諦めるんだな。三忍がお目付け役に就いている以上、どうにも出来ないだろう』
『…わかっている』
サスケに悟られず、【念華微笑の術】で互いに話をつけた二人は秘かに頷いた。おもむろにイタチの瞳が、再不斬から離れてゆく鬼鮫の姿を捉える。
「サスケ。一族の真実や三代目に関しては口外するなよ。心によく留めておけ」
「ああ」
もう一度サスケに念を押してから、イタチはナルトに一瞥を投げた。ナルトが術を解いたのを確認し、鬼鮫の後を追い駆ける。
最後にイタチは名残惜しげに弟を振り返った。一瞬微笑み、今度こそ振り返らずに立ち去る。闇の如き外套が踊った。
描かれた雲の赤き光――暁の軌跡を残して。
たゆらに流れ続ける水。一時とて定まらず、波打つ球体はその大きな空洞に囚人を見事に捕らえていた。
【水牢の術】。
以前と同じ水の牢獄に己を閉じ込めた再不斬を、ようやっと我に返った水月はふてぶてしくも鼻で笑った。
「僕にその術は通用しないよ」
寸前に体験した死の恐怖がまだ身体に残っているのか、震える声。それでもその怯気を打ち消すように水月は声を張り上げた。わざと余裕綽々に振舞う。
生意気な風情を装いつつ、水月の目線が秘かに下がった。水牢の下に広がる水を覗き込む。
以前と同じように、身体を液状化させ、水中に逃げ込もう。水面に揺れる自身の顔を見つめ、逃げる算段を考える水月。
しかしながらその目論みは、再不斬の一言で露と消えた。
「俺が同じ手を何度も食
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