六十二 和解
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相を見て、己の失態に気づいた水月が冷や汗を掻く。反して、水月の出現により窮地を脱した鬼鮫は、逆に口角を吊り上げた。
「興が削がれましたねぇ…。この続きはまた後日、ということで…」
「あ!待て、てめえ…っ!!」
罵声を振り切って、鬼鮫は身を翻した。瞬時に印を結ぶ。追い駆けようとする再不斬の顔面目掛け、水鮫が口を開いて襲い掛かった。
それを首切り包丁で一蹴する。水飛沫が跳ねる最中、急ぎ再不斬は目を凝らした。鬼鮫の姿を探す。
しかしながら既に其処には、相手の足を拘束していた包帯しか残っていなかった。
ゆらゆらと水と戯れる帯を拾い上げる。
込めていたチャクラは既に尽くしたのだろう。ただの物言わぬ包帯と化したそれを、再不斬は握り締めた。鬼鮫が立ち去った方向を睨みつける。
台無しだ。何もかもが。
普段何も考えず単騎敵陣に乗り込むような自分が珍しく策を練ったのに、無駄に終わった。
鬼鮫の愛刀『鮫肌』の気を逸らす為に、ナルトに頼んでチャクラを包帯に込めてもらったというのに、それすらも水の泡。
後一歩というところまで追い詰めた。それなのに…。
再不斬は素早く視線を走らせた。逃げようとしていた水月を視界に捉える。
「ぶっ殺す!!」
叫ぶや否や、再不斬の全身から殺気が一気に迸った。その濃厚な殺意にあてられたのか、水面下を泳いでいた魚が一斉に気絶する。すぐさま逃走しようとしていた水月でさえも、再不斬の凄まじい殺気に身体が硬直してしまった。
身が竦んで動けぬ水月を再不斬は冷やかな眼で見下ろす。その剣呑な瞳が、対戦者を取り逃がした罪を償えと告げていた。
気を失い、ぷかりと浮かび上がった魚を踏み越える。目の前まで近づくと、少年がひゅっと息を呑んだ。怯えを見せる水月を、再不斬はただ冷酷に見つめる。
そのまま激情のままに首切り包丁を振り被り……―――――――。
瞬間、心臓が止まるほどの冷たき視線が再不斬を射抜いた。
止める。勢いを削がれた首切り包丁は、水月の首の皮一枚で押し止まった。
ギリギリで間に合った事に内心ほっと息をつく。顔を上げると、自身より遙かに強い視線の持ち主と目が合った。
青い双眸。
橋上で佇むナルトの姿を目にした途端、再不斬は頭に上った血がゆっくり下降してゆくのがわかった。落ち着きを取り戻した彼は、自身を咎めるような目で見てくるナルトに肩を竦めてみせる。冷や汗が背中を伝ってゆくのを感じた。
互いの視線が一瞬絡み合う。
やがて興味を失ったかのように顔を逸らしたナルトの所作を見送ってから、ようやく再不斬は水月の首元から刃物を離した。
白い首筋に流れる一筋の血を何の感慨もなく一瞥する。
「…さ
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