六十二 和解
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だと信じてやまなかった。
だから今、サスケに真実を語った事を彼は少なからず後悔していた。やはりこのまま偽り続ける事が弟の幸せになるのではないかと。最期まで嘘吐きのまま独り死んでゆく事が最善だったのではないかと。
しかしながら当の本人はイタチの考えを一刀両断した。
「俺は…真実を語ってくれて嬉しかった!兄さんが俺の事を想って、考えてくれていた事が!兄さんが昔の……兄さんのままだった事が嬉しかった!!」
自分でも何を言っているのかわからない。それでもサスケは叫ぶのを止めなかった。止められなかった。
「だけど、俺は……っ!兄さんの思い通りにはならない!俺は…俺は自分の意志で、」
次第に小さくなってゆく叫び声を、イタチは静かに聞いていた。連呼される兄さんという一語に擽ったくなるのと同時に、弟の成長に感銘を受ける。
再び言葉に詰まってしまったサスケは、直後挑むようにイタチを見据えた。
「兄さんが認めてくれるような、忍びになる…っ!!」
イタチの瞳が大きくなる。ややあって彼は眩しげに目を細めた。
嘘で塗り固めた偽りの世界を、独り、歩く。
自身の行為に、迷いがあったのは確かだった。駆け抜けた己の道程を何度も振り返ろうとした。何が正しくて何が間違っているのか、判断出来ぬ事もあった。
嘘と偽りを纏い、ただひたすら信念を貫こうとする様は正に模範的な忍び。
それでも彼は忍びである前に、兄であった。唯一無二の弟を想う、心優しき兄だった。
「お前の越えるべき壁として、俺はお前と共に在り続ける。そしていつか…俺を越えてみせろ」
だからこそイタチは応えた。内心では既に認めていようとも、兄として、彼はサスケの前に立ちはだかる壁として佇む事を選んだ。
「その瞬間、俺はお前を立派な忍びだと認めよう」
「必ず、なってみせるよ…兄さんと対等の立場に」
同様にサスケもまた、復讐の道ではなく、共に歩み続ける道を望んだのだった。
嘘と偽りを纏い、本心さえも包み隠す孤独な鞘と復讐の炎に燃える抜き身の刀。仲違いした兄弟はこの時ようやく旧の鞘へ収まった。
「み〜つけた!」
突如降ってきた無邪気な声。
再不斬と鬼鮫の戦闘に押し入った不届き者は、悪びれもせずに、にやりと笑った。
「やっぱ、再不斬先輩だ!お、鬼鮫先輩も!『霧の忍刀七人衆』の二人と会えるなんて光栄だなぁ!!」
以前、自来也と一触即発時、再不斬の前に現れた少年。生意気にも己の愛刀『首切り包丁』を狙ってきた輩が、戦闘の最中のこのこやって来たのである。
「……おい、こら…」
自分に優勢だった闘いに水をさされ、再不斬は青筋を立てた。
再不斬の地を這うような低い声と憤怒の形
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