六十二 和解
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を着せられてもか!?」
「そうだ」
「…っ、どうして恨まない!?こんな…、こんな理不尽な扱いを受けておきながら…ッ!」
「それは俺が木ノ葉に生まれた事を誇りに思うからだ」
淡々と語るイタチの口調は淀みない。反してサスケは変わらぬ押し問答が歯痒くて仕方が無かった。
何も知らずに兄を責めていた自身が腹立たしい。同様に、兄を罪人とした里が恨めしい。兄の苦悩も功績も知らず、のうのうと暮らしている里人が憎い。
弟の心中を推し量り、眉をひっそりと顰めたイタチが「それに」と続ける。
「里を恨む権利がお前にあるのか」
「里の無知な連中を裁くのに何の問題がある!?」
「……それをお前が言うのか」
イタチの眉間に深い皺が刻まれる。思わず後ずさったサスケを彼は低く抑えた声で、しかしきっぱりと非難した。
「では聞くが、お前も先ほどまでその一人ではなかったか」
「……ッ、」
サスケは反論出来ない。現に自身も世論の評価と同じく、イタチを罪人として見てきたのだから。
唇を噛み締める。俯いた弟をイタチはじっと見つめていた。やがてふっと苦笑する。
「…すまない。俺はお前にどうこう言える立場ではないのに…」
イタチの謝罪に、サスケは弾かれたように顔を上げた。兄の言葉の端々から弱さが感じ取られ、目を瞬かせる。
「俺はお前を生かす事で、お前を守ったと自負していた。独り残されたお前の気持ちを考えようとも思わなかった…」
イタチは、一族に拘る同胞を器が浅いと軽んじ、己の器はうちはには測れぬほど深いと矜持を抱いていた。それこそが自惚れだと、当時は気づかなかった。
木ノ葉の平和を想い、うちは一族の粛清を選んだ。戦争を回避する為の正義だと、己に言い聞かせた。
だがサスケは、里の平和と引き換えに、父を母を、家族を失ったのだ。同時に思い描いていた兄との未来をも。
里と一族を天秤に掛けられたイタチはあの夜間際まで迷っていた。混迷した心境の中、微かに過ったのは弟のあどけない一言。
『兄さんと一緒に、俺も木ノ葉の里を守るんだ!!』
イタチはその夢に縋りついた。弟の言葉を鵜呑みにしてしまった。
サスケは勿論、うちは一族を含めての木ノ葉を守りたかったのだろう。それを理解していながらも、イタチはその一つの単語に、里という一語に、後押しされた。そうする事で己の行為を正当化したかった。
情けないとも、ズルイ人間だとも十分に理解している。それでも彼は弟の夢を掲げる事で救われたかった。己がこれから起こす惨劇を正義という名の許で許されたかった。
「……今となっては…」
突如独り言のように呟いたイタチが空を仰ぐ。暫し瞳を閉ざして、次にサスケへ顔を向けた時には、自嘲染みた笑みが口許に浮かんでいた。
「今となっては思うよ。サスケ…お前に言ってお
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