暁 〜小説投稿サイト〜
とある星の力を使いし者
第121話
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 倒れた時には手遅れで、身体中に転移していた。
 医者にはもう治す事はできないと言われて、父さんは大泣きした。
 今思えば、冥土返し(ヘブンキャンセラー)にでも頼めば、完治できたかも知れないがな。
 話が逸れたな。
 ベットに寝ている母さんは、病気で苦しいにもかかわらず、泣いている父さんを慰めた。
 その時の俺は何をしていたと思う?」

「えっと・・・・一緒に泣いていたとか?」

「全く違う、俺はな病室の扉の前でただ立っていただけだ。
 父さんと母さんのやり取りを黙って見ていただけ。
 涙なんて一つも流していない。
 でも、母さんはそんな俺を見ても、優しく笑ってこう言ったんだ。」

『ごめんね、恭介さん。』

「ごめんね、って言ったのか?」

「何でそう言ったのか今でも分からない。
 けど、あの時の俺はそれが何かに響いたんだろうな。
 俺は能力を使って母さんの身体中にある癌を全て消滅させた。
 あの時の俺からしたら、本当に想像もできない行動だったな。
 その後、二人は泣きながら抱き合って、無事に退院で今に至る訳だ。
 ユミナさんを見た時、病院で寝ている母さんを思い出してな、それで助けただけだ。」

そこまで話した麻生は、何かに気がついたのか上条とインデックスの顔に、視線を送りながら言う。

「どうして、こんな事を話す気になったんだ?
 何よりユミナさんを助けた理由を明確に言っていない気がする。
 何がどうなって・・・・・」

何かぶつぶつ呟きながら、麻生は再び歩き出した。
自分でも、なぜこんな話をしたのか分からないのだ。

「ねぇ、とうま。」

「ん?」

「きょうすけって、意外に分かりやすいかも。」

「俺も土御門に言われた時はよく分からなかったけど、確かにあいつは分かりやすいかもな。」

何となくだが、二人は麻生がユミナを助けた理由が分かっていた。
麻生が秋葉を助けたのは、単に母親を失いたくないと無意識に思ったからではないだろうか?
そして、ユミナを助けたのは、その時と同じ気持ちが芽生えたから、助けたのだろう。
あの親子は少しだけ、自分の親と同じ境遇だったからこそ、助けた。
そんな単純な気持ちに麻生は気がついていない。
麻生は変わっていた。
それも良い方向に。

(あいつ、何だかんだで鈍感なんだな。)

上条も人の事は言えない事を思う。

「って、俺達もこんな所で突っ立っている場合じゃない。
 早く、恭介に追いつかないと、部屋に入れてもらえないかもしれないぞ。」

「あっ!ちょっととうま!
 待ってよ!」

先に歩いている麻生に追いつく為に、上条は走り出す。
その後ろをインデックスが慌てて追いかけるのだった。





[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ