第二章 [ 神 鳴 ]
二十五話 神々の戦 古王と新王
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ちょっとッ!あぁもう勝手なんだからッ!」
一方的に言って駆け出した虚空の背に、そんな諏訪子の叫びが刺さるが当の本人は気にも留めず自身が定めた目標に向け疾駆する。
飛び込んでくる虚空に対し大和の三人が迎撃の構えを見せた――――次の瞬間、大地が鳴動を始め隆起を起こす。
隆起した大地から顔を出したのは植物の芽であり、まるで成長の過程を早送りするかの様にその枝葉は急激に樹木へと変わり天に向け伸びていった。
成長していく樹木の幹周りは十mを優に超え、高さは百mを遥かに凌ぎ日の光を遮ると地上に影を落とした。
そんな巨木が幾十・幾百と茂り、天照によって焦土と化した大地を数瞬もかからず大森林へと復活、否変貌させる。
坤を創造する程度の能力――――大地に属する事象なら全てを顕現させる事が出来る破格の力であり、その力を有する諏訪子を人々は畏敬を込めてこう呼んだのだ。
『土着神の頂点』と。
その場に居る全員が改めてその二つ名の意味を悟り圧倒された。
生れ出た木々によって天照達と分断され孤立した神奈子に、樹木の影から虚空が襲い掛かり白刃を振り下ろす。
だが神奈子は虚空の奇襲に取り乱す事も無く、迫り来る白刃の一撃を棍で確りと受け止めた。
鍔迫り合いの形で対峙する虚空と神奈子の視線がぶつかり、二人は合わせ鏡の様に口元を緩ませる。それは友好的な笑みでは無く――――腹の探り合いの駆け引きであった。
「神奈子……悪いんだけど、ちょっと僕と逢引してもらえないかな?」
軽薄な笑みを浮かべそんな台詞を吐く虚空に対し、神奈子も微笑みながら、
「おや?女を誘うにしては強引過ぎやしないかい?えぇ七枷?」
「ごめんね、僕……不器用なんだよ♪」
「なるほど……でもその程度の器じゃ、あたしの逢引相手としては役者不足だよ」
そんな軽口の叩き合いを行いながら両者は互いの隙を探り合う――――そんな二人に、木々の間を駆け抜けてくる影が迫った。
それは剛刀を振りかぶった須佐之男――――狙いは間違い無く虚空であり、刃の様に鋭い視線を向けている。
そして突如、須佐之男の周囲に彼が手に持つ剛刀と寸分違わぬ刃が現れる――――その総数、実に五十本。
須佐之男の殺気に反応するかのように五十の白刃が怪しい輝きを放ち、
「おいおい!戦の最中にウチの軍神、口説いてんじゃねぇよッ!」
彼のその台詞を引き金に虚空に向け一斉に撃ち放たれる。
神奈子との鍔迫り合いを続ければ飛刀に貫かれ、かと言って迫る白刃に意識を向ければ神奈子に隙を晒す事になる――――虚空は絶命の危機に陥った。
薄らと白い軌跡を残し高速で飛翔する鋼の群れは、狂う事無く虚空の身体を射抜き蹂躙する―――
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