閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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あたしの指揮力。これは自惚れではなく、この癖のある二人を指揮した上で戦えるのは、あたし以外にはいないと自負している。その交流戦を一番張り切っていたのが、スバルなのだから先ほどの台詞も無理はない。
「仕方ないでしょ。交流戦は六日後。アスナの謹慎が解けるまで一日足りないわ」
「わかってるけどさぁ」
スバルはそう言いながら恨みがましい視線をアスナへと送る。
「……なんだ」
「なんでもないよ」
アスナは、元々乗り気ではなかった。話を聞いた時も、勝手にやれと言ってのけたくらいだ。アスナは気怠げに床で丸くなっていたが、やがて何かを思い出したように起き上がるとキッチンへと歩き出した。
「なに? お腹でも空いたの?」
「……やくそく」
約束って何だ。アスナは冷蔵庫から卵を数個取り出すと、器用に片手で割りながらフライパンを準備している。アスナがボールへと割り入れた卵を菜箸でかき混ぜていると、ドアがノックされた。……待て、ノック? アスナの部屋に来客? アスナが音もなく移動し、扉を開けるとそこには──── 常夏帰りの観光客みたいな肌をした娘がいた。
「ティア、失礼だよっ」
「五月蠅いわね。……アスナ、誰なの? 紹介してくれる?」
「なるほど。彼女のお弁当のおかずを拝借して青い肉まんを押しつけた挙げ句、ちょっと悔しいから今度は呼び出して、私のを食べてみろ。こんな感じね」
「……おおむね」
「あんた本当にいい加減にしなさいよ。……ごめんね。迷惑掛けて。律儀に来なくても良かったのよ? どうせこの娘は明日には忘れてるんだから」
丸めたノートでアスナの頭をぽこぽこ叩きながら彼女へと謝罪する。そんなあたし達を見て、彼女は楽しそうに目を細めながら言った。
「いえ、気にしないで下さい。アスナさんの出汁巻きを食べてみたかったですし」
アスナは既にあたしの手を逃れキッチンで料理中だ。キッチンの前でちょこまかと動くアスナを見ていると、ケージの中に入っているハムスター見ている気分になってくる。そんなあたしの視界の端にひらひらと揺れる何かが映った。それは──── 真っ赤なリボンだった。だが、それは髪を留める本来の役割を果たしておらず、褐色娘の二の腕に巻かれていた。あたしの視線に気付いたのか、彼女は恥ずかしげに答える。
「あはは。変、ですよね」
「ううん。変じゃないわ。唯、理由は聞きたいかな」
「髪は元々長かったんですけど……訓練校の編入試験に合格したのを機に、心機一転しようと思って切っちゃって。その日、家に帰ったらお父さんが合格祝いでこのリボンを買って待ってたんです。申し訳なくって……だから髪には結べなくても、せめていつも身につけておこうかなって。それにクリス
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