暁 〜小説投稿サイト〜
空を駆ける姫御子
閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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「……だしまき」

 彼女が驚きで目を丸くする。

「凄いです。変わったオムレツだね。って言う人はいるんですけど」

「……だれに教えてもらった?」

「母です」

 彼女は短く。そして誇らしげに答えた。無躾だとは思ったが、彼女に母親の名前を聞いてみる。やはり思った通りだ。兄やスバルの名前と同じ()()

 何となく親近感が湧いた私は暫くの間、彼女と取り留めのない話をして過ごした。兄弟が多いこと。食事時は戦争だと言うこと。彼女だけが『リンカーコア』を持って生まれてきたこと。あまり裕福ではないが、魔導師になりたいと言った彼女を快く送り出してくれた、両親と兄弟のこと。そんな家族の為に立派な魔導師になって家計を助けたい──── 彼女の夢。

 少し感心してしまった。そんな理由もアリなのか。『魔導師』は高給取りだ。加え階級が上がれば、収入も跳ね上がる。ふと、最近何かと私に構う二人の顔を思い出した。ティアナは執務官になりたいらしい。スバルは自分の力で多くの人を助けたい。彼女は両親や兄弟に楽をさせてやりたい。私は兄の助けになるために。だけど、肝心の兄が喜んでくれない。私は──── 何か間違っているのだろうか。

「……あげる」

「へ?」

「……にくまん。お礼」

「あ、ありがとうございます」

 戸惑う彼女に肉まんを押しつけて立ち上がる。さて、どうやって戻ろうか。と、その前に一応聞いておこう。

「……なんで、サンタだと思った?」

「小さな頃……お父さんが、サンタの衣装を用意出来なかったみたいで……丁度あなたが着ているような服装だったんです。それを思い出してしまって」

 なるほど。いいお父さんだ。そう言えば、私の兄は凝り性の所為なのか無駄にサンタだった。何時の頃だったろう。サンタなどいないと知ったのは────

「ありきたりだけど……その人がいると信じていれば、サンタはいるんだと思います。それが例え家族の誰かだったり、見ず知らずの人だったとしても。夢や希望や勇気を与えてくれる。そんな人が『サンタクロース』なんですよ、きっと」





「……桐生候補生。外出は禁じていたはずだ。そこへ座りたまえ。それと肉まんを食べるのを止めなさい」

 あたし達の苦労など露知らず。窓から堂々と、「サンタです」などと巫山戯たことを吐かしながら帰ってきたアスナの後頭部を引っ叩いた時。丁度運悪く教官に見つかってしまった。教官に首根っこを掴まれ、ずるずると教官室まで連れてきたわけだが。こうなった以上、腹を括るしかない。

「誰がソファでくつろげと言ったんだ。正座しなさい。……違う、ソファにじゃない。床にだ。そんなにソファが好きかね……肉まんはいらん。私に賄賂はつうじんぞ。その食欲を無くすよう
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