閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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ったからアスナに聞いたことがあるわ」
「え、なになに?」
「それはね──── 不思議な力の源。だそうよ」
「アスナ? 入るわよ」
アスナの部屋の扉は来訪者を誰一人として拒まない。要するにロックしないのだ。男子禁制の女子寮とは言え、それは飽くまで建前だ。寮監の目を盗んで外出する生徒もいれば、男を引っ張り込んで口にするのも憚れるような行為に及んでいる生徒もいる。つまり決して男子生徒が入ってこられないわけじゃない。だというのにアスナは何度言い聞かせても施錠しなかった。
何度呼びかけても返事がない事態に、あたしの直感はけたたましく警鐘を鳴らした。スバルへと素早く視線を走らせ扉を開ける。部屋の中へ飛び込むようにして踏みいると、目に入るのは相変わらず殺風景な部屋──── そこには誰もいなかった。
「アスナ、何処行っちゃったの……謹慎処分中なのにっ」
スバルの焦燥を含んだソプラノが、冷たい部屋へと響いた。落ち着け。処分内容は教官が伝えたと言っていた。シャワー? いや、この時間は使えない。謹慎処分中に部屋を抜け出したことが知られたら……落ち着け。一体何処に────
「ティアっ、これ」
スバルが手にしているのは一枚のメモ。どうやら、机にあったらしい。あたしはスバルの手からメモを引ったくるようにして受け取ると、メモへと視線を落とした。
『にくまん買ってきます』
あたしとスバルは力なく──── その場へ崩れ落ちた。
「呆れた……アスナらしいけど」
なのはさんはグラスの氷を、ストローでからから廻しながら文字通りの呆れ顔をしていた。エリオとキャロは苦笑いである。
「大変でした……アスナが戻ってくるまで、当時やっと使えるようになった『幻影』を使って巡回の目を誤魔化したり。でも、戻ってきたところを教官に見つかってしまって」
そう、本当に大変だった。だけど、戻ってきた時のアスナはいつもよりほんの少しだけ雰囲気が違っていた。それはきっと、彼女の御陰だ────
私が訓練校に入学したのは『魔導師』になるためじゃない。強くなる為。兄の力になる為に。兄と一緒にミッドチルダへ来てから随分と時が過ぎた。多くの人が私のことを、見た目通りの年齢だと思っている。そんな人間の大半は私のことを侮った。更に、『リンカーコア』がない事を知ると私を見下した。私が『飛べない』事を知ると嘲笑した──── 馬鹿な人たち。
そんな人間は例外なく、完膚無きまでに叩き潰してきた。昨日は愚かにも兄を侮辱した男を、ちょっと小突いてやった。口から泡を吹いて床にへばりついた姿は、実に滑稽で愉快だった。小さな頃から死に物狂いで修
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