閑話3 〜追憶の日々 -again【暁 Ver】
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揶揄するような内容だったことは憶えている。余りにも低俗な内容だった為に、あたしの脳が記憶するのを拒否した所為かもしれない。そんな話をこちらへ聞かせるように。陰険で知性を疑うような嫌がらせ。それが──── どんな結果を招くとも知らずに。
隣に座っていたアスナが消えた。次の瞬間あたしの鼓膜を打ったのは、金属で何かを殴りつけるような鈍い音。アスナが自分の座っていた椅子で、相手の頭を殴り飛ばしたのだ。食堂に響く数人の少女の悲鳴と動揺の波。アスナは食堂の床で頭を庇いながら踞っている男へと近づくと、手にしている椅子で尚も殴り続ける。男がどんなに懇願しても、無表情に。それがまるで只の作業とでも言うように殴り続けた。
男の傍にいた少女がアスナを見て、泣きながら逃げ出す。食堂に響き渡る怒号と怒声。男は漸との思いで立ち上がり、アスナから逃れようと背を向ける。頭部が切れているのか、制服の肩まで血に染まっていた。アスナは周りの状況など全く意に介した風もなく、ゆらりと近づくと男の背中へ拳を叩き込んだ──── 正確には肝臓の位置を。男は悲鳴を上げながらのたうち回り──── そのまま動かなくなった。
先ほどまでの悲鳴、怒号、怒声。全ての声が消え失せ、その場にいた人間は悲惨な交通事故を目撃してしまったような面持ちで、アスナを見ていた。あたしとスバルが、やっとの思いで動きだし教官が駆けつけた時。アスナは感情の極端に薄い瞳で男を見下ろしていた。
しまった。みんなドン引きだわ。
「そんなに酷かったの?」
「……とにかく我慢を知りませんでした。特にお兄さんや家族のことを悪く言われると人が変わったようになって。今でもその傾向はありますけど。今、六課にアスナがいるのは奇跡と言っても大袈裟ではないと思います」
「前回は聞かなかったけど……どうしてなのかな?」
フェイトさん? それをなのはさんに聞いても。なのはさんが困ってます。知ってはいるが、あたしの口から話すことじゃない。あたしは無言で答えた。
「あの肝臓の位置を殴られると気絶してしまうほどなんですか?」
エリオがこの場の空気を変えるように質問する。エリオにしても、キャロにしても気遣いが出来る子供だ。この質問にはスバルが答えた。
「キドニーブロー、肝臓打ちだね。肝臓は急所の一つだから、シューティングアーツでも公式の試合では反則。大の男でもまともに入ると、もの凄い痛みで気絶しちゃう」
しまった。もっと引かれた。エリオの気遣いが無駄になったわ。
「……嫌なことがたくさん、あったんだと思います。きっと」
キャロの小さな口から想いが零れて消えていく。
「嫌なことがたくさんあると自分がこの世界で、ひとりぼっちのような気がしてき
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